J1昇格を決めたアルビレックス新潟の副主将、DF早川史哉選手=新潟市西区出身=が、新潟日報社に手記を寄せた。目標達成を喜びながら、「より高みを目指す」と決意を示した。 

記念撮影で笑顔を見せるDF早川(中央)=ビッグスワン

◆加入前からアルビが大好き、サポーターでした

 アルビレックス新潟に選手として加わる前から、僕はアルビが大好きでサポーターでした。スタジアムで観戦していた頃、2000年代のJ2時代を戦っているクラブが盛り上がっていく様子を一人のサポーターとして感じていました。

 サポーターでありながら、僕はジュニアユースやユースでプレーしているときには、J1の舞台でこのクラブの一員として戦いたいとも強く思っていました。今思えば、クラブを支えるサポーターの皆さんや、新潟という地域がチームを支えてくださる熱量の高さに、大きな憧れを感じていた気がしています。

 だから、2016年にトップチームのメンバーに加えていただいたことは、本当に嬉しい出来事でした。そのシーズンに数試合でもJ1を舞台に戦えたことは、自分にとって大切な思い出として残っています。

◆闘病に集中、チームに貢献できず歯がゆさ

 その後、白血病と診断されてから復帰するまでの道のりでは、闘病に集中しながらも、チームに貢献できずにずっと歯がゆい思いを抱いていました。絶対にピッチに戻って貢献するという思いで毎日を過ごし、19年シーズンにビッグスワンに復帰できた瞬間の嬉しさは忘れることはないでしょう。

 20年シーズンに新潟の監督に就任したアルベル監督(現FC東京監督)のもと、ボールを大切にしてゴールに向かっていくという新しい新潟のスタイルを模索し、そのスタイルを貫いていくことの重要性を感じました。また、自分たちのスタイルで勝ち続けることの難しさも痛感しました。自信につながることもあれば、まだまだ自分たちには足りないものがあると気付かされるシーズンだったと思います。

 アルベル監督と共に21年シーズンまで戦い、自分たちのスタイルの輪郭が見えてきた中で、今シーズンは松橋力蔵監督がトップチームの指揮を執りました。今までのスタイルに加えて、僕たちの能力を引き出してくれたのは間違いありませんが、何よりも僕たちのことを強く期待してくれていると感じます。

昇格を決め笑顔を見せる(左から)DF堀米、MF高木、DF早川=ビッグスワン

 まだまだ僕たちはやれるんだ、J2で戦いながら基準をJ1まで引き上げて戦うんだという雰囲気の中で、チーム内の競争は今までにないほど激しさを増しています。選手やチームスタッフだけでなく、フロントスタッフも含めて、どこを目指して戦っているのかという軸を持ち、目先の結果にこだわりながら一歩ずつ進んできた。それは、未来を見据えて取り組んでいたのだと実感しています。

◆シーズンを重ねるごとに変貌、濃厚な時間

 これまで新潟にはいろいろな選手が加わり、チームのために戦い、このクラブに多くの物を残してくれました。選手同士の出会いや別れなど、今まで本当に多くのことがありました。振り返ると一瞬のことのように感じますが、一人ひとりの個性が光るチームがシーズンを重ねるごとに変貌を遂げたことを思うと、ここまでの時間は本当に濃厚なものでした。

 J1を目指す戦いの中で、新潟に加わった舞行龍くん(舞行龍ジェームズ選手)やゴメス(堀米悠斗選手)、よしくん(高木善朗選手)など、苦しい時期から長い時間をかけて共に戦い続けて来た仲間とは、ピッチだけでなくプライベートでもたくさんの話をしました。単にクラブのことを口にするだけに終わらず、議論と言っていいほど、チームとしてここを目指して進もうという話や、クラブがどう成長していくべきかということも意見を言い合いました。

 もちろんJ1昇格を意識した話し合いもありましたが、それ以上に未来に向かってクラブがこの先どのように成長していくべきかを語り合った時間の方が長かったと思います。

◆新潟全体が一丸に、共に先へ

 J1昇格という目標を達成したことは、クラブの歴史の1ページに刻まれます。その瞬間に立ち会えたことは嬉しいですが、より高みを目指してクラブは進んでいかなければなりません。チームに関わる選手やスタッフだけでなく、クラブのフロントスタッフも同じです。加えて、クラブを支えてくださるサポーターや新潟という地域が一丸となって、サッカーをひとつのきっかけとして新潟全体を活性化させながら、共に先へと進んでいきたいです。

 今季、僕たちは挑戦する気持ちを常に燃やし続けてきましたし、その気持ちが揺らぐことはありません。これから先も、選手一人ひとりが向上心を突き詰めるのを止めないことが絶対に必要ですし、J1昇格の目標を達成したこの瞬間から、より高いところに目標を設定し直して取り組み続けていく心の強さも磨いていきたいです。

 J1という舞台は決して優しいものではありません。互いに要求のレベルを高める必要があると同時に、チームの結束をさらに強めながら努力することが不可欠です。とにかく今季はあと2試合。クラブに関わる全員がJ2リーグ優勝に視点を合わせて、全力を尽くしていきます。

試合終了後、サポーターの前でJ1昇格を記念して写真撮影する新潟の選手たち=ビッグスワン