シュローダー・エコノミクス・チーム(以下、エコノミクス・チーム)では、足元の景気サイクルにおける
金融緩和の実施が、経済にとって逆効果となることを懸念しています。
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実体経済が完全雇用に近い状況で米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを実施したことで、インフレが粘着化するリスクが高まってい ると考えます。エコノミクス・チームでは、FRBが2025年末までに、さらに2回の追加利下げ(それぞれ0.25%)を実施するとみています。しかし、その後は、堅調な経済成長が労働市場の回復とインフレ加速をもたらし、政策金利がさらに引き下げられる可能性は低いと考えます。したがって、金融市場はターミナル・レートが3%未満に到達することを織り込んでいますが、この見方は過度であるとみています。
FRBが金融緩和を決定したことは、エコノミクス・チームにとっては驚くべきことでした。最新のマクロ経済見通しでは、関税政策と財政政策の不 確実性が後退することに伴い経済活動と採用活動が回復し、FRBは金融緩和を控えると予想していました。しかし、米国経済は確かに回復しているものの(FRBの最新の金利・経済見通しで、経済成長見通しが上方修正されたことと整合的です)、雇用者数の伸びは鈍化基調にあります。これは、労働市場の動向は遅効性を伴うこと、また、米国政権による移民取り締まりの影響によるものだと、エコノミクス・チームは 分析しています。一方、パウエルFRB議長はジャクソンホール会議で異なる見解を示し、「リスクのバランスは変化しつつあるようだ」と警告しまし た。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、パウエル氏は、インフレが「やや高い水準にある」一方、経済成長は「鈍化」し、雇用増加のペースは「減速」している点を引き続き強調しました。また、最新のドット・チャートを踏まえ、エコノミクス・チームは、FRBが今後2回の会合でそれぞれ政策金利を0.25%引き下げ、3.75%とすると予想しています。
しかし、足元の景気サイクルの段階で金融緩和を実施することは、経済にとって逆効果となりうる可能性を依然として懸念しています。実際のところ、足元、景気刺激策を強く求めるような環境とは言い難いと考えます。主要株式指数は史上最高値を更新し、クレジット市場ではスプ レッドが縮小、財政政策が今後さらなる刺激を与える可能性がある中で、経済成長率は既に潜在成長率を上回る水準にあります。こうした 環境下、利下げは実質成長率よりも、むしろインフレ率を押し上げる可能性が高いと考えます。2026年の米国経済成長率見通しは2.2%か ら2.3%と小幅な上方修正にとどめましたが、同年の米国インフレ見通しについては、市場予想を大きく上回る3.3%としました。
さらに長期的な観点では、インフレが制御不能になるリスクが存在すると考えます。構造的な制約、特に労働供給の縮小により、経済の潜在成長率は低下基調にあると考えます。同時に、労働供給の縮小は労働市場の逼迫と賃金上昇率の加速につながり、インフレが粘着化するリスクが高まっています。これは、米国長期債にとってマイナス要因となるでしょう。特に、既に懸念事項となっている米国債務の動向を考慮すれば、尚更です。
世界的には、米国需要の拡大は追い風になると考えます。貿易を巡るリスクが後退し、世界的な製造業関連指標の回復を踏まえ、エコノミ クス・チームでは米国以外の地域においても経済成長見通しを上方修正しました。しかし、米国とは異なり、景気刺激策のその他地域への効 果は、インフレよりも実質経済成長に波及すると考えます。皮肉なことに、トランプ米政権が需要の国内回帰に尽力しているにもかかわらず、 世界経済全体が同政権の景気刺激策から最大の恩恵を受ける可能性があります。
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