大川原化工機訴訟の東京高裁判決を受け、「全面勝訴」と書かれた紙を手にする大川原正明社長ら=5月、東京高裁前
 大川原化工機訴訟の東京高裁判決を受け、「全面勝訴」と書かれた紙を手にする大川原正明社長ら=5月、東京高裁前

 警視庁公安部の見込み捜査が指弾された大川原化工機の冤罪事件を巡る訴訟で同庁と検察が上告を断念した。一、二審とも逮捕・起訴が違法と判断され、白旗を揚げざるを得なくなった。「マイナス1万点ぐらい食らった」と警視庁幹部。既に公安捜査の改善策を示してはいるが実効性に疑問の声も聞かれる。経験不足による捜査能力の乏しさ、部内の風通しの悪さ…。再生を図る公安部には課題が山積している。

 ▽欠いた合理性

 「重く受け止めることに尽きる」。上告期限の11日。東京高裁判決について報道陣から見解を問われた中島寛公安部長は表情を変えず説明した。

 5月28日の高裁判決は、一審と同様、逮捕や取り調べの違法性を認定。さらに生...

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