
劣化が進む端島の建物群=2024年10月、長崎市
世界遺産「明治日本の産業革命遺産」が登録10年を迎える中、構成施設を抱える自治体や企業の苦悩が深まっている。施設は自然劣化が進み、高額な保全費用が重い財政負担としてのしかかる。有識者が国主導で財源を確保するよう訴えるのに対し、政府内で予算拡充の動きは乏しい。専門人材の確保も課題で、打開策は見いだせていない。
▽崩落寸前
「国が全ての保全にお金を出すのは非現実的。ただ、市も潤沢な財源があるわけではない」。遺産の一部である「端島」(通称・軍艦島)を管理する長崎市の栗脇善朗世界遺産室長は、苦しい内情を語る。
かつて石炭採掘が盛んだった島は全周約1・2キロを海に囲まれ、海水の塩害が日々、建物をむしば...
残り835文字(全文:1135文字)