劣化が進む端島の建物群=2024年10月、長崎市
 劣化が進む端島の建物群=2024年10月、長崎市
 長崎市の端島で、かつて労働者らが暮らしていたアパート「30号棟」=2024年10月
 劣化が進む端島の建物内部=2024年10月、長崎市
 鹿児島市の寺山炭窯跡。2019年の大雨などで一部が崩れ、現在はシートに覆われている=6月
 世界遺産「明治日本の産業革命遺産」を構成する長崎市の端島(通称・軍艦島)=5月

 世界遺産「明治日本の産業革命遺産」が登録10年を迎える中、構成施設を抱える自治体や企業の苦悩が深まっている。施設は自然劣化が進み、高額な保全費用が重い財政負担としてのしかかる。有識者が国主導で財源を確保するよう訴えるのに対し、政府内で予算拡充の動きは乏しい。専門人材の確保も課題で、打開策は見いだせていない。

 ▽崩落寸前

 「国が全ての保全にお金を出すのは非現実的。ただ、市も潤沢な財源があるわけではない」。遺産の一部である「端島」(通称・軍艦島)を管理する長崎市の栗脇善朗世界遺産室長は、苦しい内情を語る。

 かつて石炭採掘が盛んだった島は全周約1・2キロを海に囲まれ、海水の塩害が日々、建物をむしば...

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