取材に応じる、人権派弁護士として活躍していた王宇氏(共同)
 取材に応じる、人権派弁護士として活躍していた王宇氏(共同)

 中国当局による10年前の一斉連行後に逮捕された元弁護士は過酷な拘束の記憶が今も消えない。習近平指導部は市民の言動を監視し、体制に脅威となる存在を根こそぎ排除する構え。元弁護士は圧政下で困難に直面する社会的弱者を「見過ごすわけにはいかない」と、弁護士資格を剥奪された後も支援を続けている。

 ▽失神

 「心の準備はしていた」。人権派弁護士として活躍していた女性、王宇氏(54)は2015年7月9日の出来事を振り返った。13年ごろから反体制派や宗教指導者らの拘束が相次ぎ、王氏を中傷する文章もインターネット上で出回っていた。

 あの日、数十人の警察官が北京市の自宅に押し入り、黒い袋を頭にかぶせて連行した。重...

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