
風船爆弾製作の様子を自身で描いた絵を見ながら、大久野島での体験を語る岡田黎子さん=6月、広島県三原市
広島県三原市の元美術教員、岡田黎子さん(95)は被毒者と呼ばれる毒ガス障害者向けの「医療手帳」と「被爆者健康手帳」の両方を持つ数少ない戦争体験者だ。戦時中、旧日本軍最大の秘密毒ガス工場に学徒として動員され、敗戦直後は原爆が投下された広島市の近郊で救護活動に当たった。「人生最後の語り」と取材に応じ「戦争の加害責任を直視しなければ過ちを繰り返す」と警鐘を鳴らした。
▽湿った世界
「死にとうない」。現在の広島県竹原市にあった忠海高等女学校の学徒だった岡田さん。1944年11月、瀬戸内海に浮かぶ大久野島で「風船爆弾」製作に動員された。一億玉砕、本土決戦―。そんな言葉を聞くたび、水面を見詰めて思った。...
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