男子マラソン・服部勇馬

夏の里山 仲間と駆け

 ザッザッザ。砂利と土の農道を中学校の陸上部員が駆け抜けていく。息を切らして走る夏の光景は、あの頃と何も変わらない。

 今では十日町市になった旧中里村。南北に信濃川が流れ、河岸段丘と呼ばれる階段状の里山に水田が広がる。東京五輪男子マラソン代表の服部勇馬(26)=トヨタ自動車=はこの地に生まれ育ち、中里中で陸上競技を始めた。

 「練習は苦しかったし、つらかった。けど、笑って楽しく過ごせた。みんなで何かを成し遂げる喜びを初めて味わえた」

 丘を縫うように周回し、急坂を全力で上った。真夏の日差しの下、倒れるまで走った。ライバルの同級生を懸命に追い続け、気付くと県大会を制するまでになっていた。

 冬は距離スキ...

残り1745文字(全文:2045文字)