哲学者の西谷修氏
 哲学者の西谷修氏

 私たちは1世紀余り続いた「西洋の覇権」の終焉に立ち会っているのではないか―。第2次トランプ米政権の外交に、そんな思いを抱いている。

 米国は、欧州が「発見」した「新大陸」で英国の植民地として出発した。宗主国を戦争で破り、欧州の国家間秩序の枠外に出た「アメリカ連合国家(USA)」は、開拓により自由に土地を手にできる「私的所有権」を駆動力に発展していく。

 20世紀を迎え、第1次大戦で欧州が分裂、疲弊すると、米国は西洋への復帰を決断し、欧州を庇護しつつ世界統治に乗り出す。第2次大戦で連合国に勝利をもたらして主導権を握り、ソ連との冷戦をも勝ち抜き「1強」の座を手にした。

 だがその陰で、覇権のコストが国...

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