
藤原辰史さん
愛知県の尾張瀬戸を仲間たちと歩いた。かつて窯に入れる薪の原料を供給した山に三方を囲まれている。瀬戸には蛙目粘土の鉱山があり、全国各地の陶芸産地に粘土と、ガラスの原料である珪砂を供給。薄くグレーがかった白い粘土は色がのりやすく、また変形を維持する可塑性が高いので形状を整えやすい。
保存運動の末に残った窯垣の風景もたまらない。くねくねと曲がった小径の塀に古い陶器の窯道具がぎっしり埋められて、幾何学模様を見せている。
瀬戸は「せともの」の里である。だが高度経済成長期に外国で大量生産された器やプラスチック文化が到来して人びとの陶芸離れが進み、苦戦を強いられてきた。窯元や問屋も店をたたんだり、縮小をし...
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