日本製鉄の悲願だった米鉄鋼大手USスチール買収の手続きが完了したが、もろ手を挙げて歓迎するわけにはいかない。USスチールは日鉄の完全子会社となったものの、米政府が一定程度、経営に関与できる条件が付き、企業活動に制約を加える恐れもあるからだ。安易な経営介入を厳に慎むよう米政府に求める。

 買収に際して、日鉄は米政府と「国家安全保障協定」を締結し、USスチールの経営に懸念が生じるような重要事項に米政府が拒否権を持つ「黄金株」を発行する。

 これが、買収に反対していたトランプ大統領を翻意させたのは間違いない。米鉄鋼産業は安保に関わる防衛、社会インフラといった主要産業を支えている。協定と黄金株により、鉄...

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