笹川平和財団の前川美湖主任研究員
 笹川平和財団の前川美湖主任研究員

 フランスのニースで第3回の国連海洋会議が開かれ、危機的な状況にある海の環境保全策が話し合われた。同じ時期に日本でも海の環境保全上、重要な前進があった。今国会で「いずれの国の管轄にも属さない海域の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する協定(BBNJ協定)」を批准することが可決されたのだ。

 「いずれの国の管轄にも属さない区域(ABNJ)」とは、主権国家の接続水域と排他的経済水域のさらに先、国際法上どこの国の権限も及ばない海域のことで、公海と深海底から構成される。

 公海は、地球の表面積の半分、海洋の表面積の65%を占める。地球上の生命を育み、大気中の熱を吸収するなど気候を調整し、水の大循環を担っ...

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