ヨーロッパ諸国の歴史修正主義に関する法制度を解説する学習院女子大の武井彩佳教授=2025年4月、熊谷政宣撮影
 ヨーロッパ諸国の歴史修正主義に関する法制度を解説する学習院女子大の武井彩佳教授=2025年4月、熊谷政宣撮影
 アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所(第2収容所)で、所内に移動するユダヤ人の女性収容者ら。背後に立つのはナチス親衛隊員。1944年、親衛隊撮影(エルサレムの記念館「ヤド・バシェム」提供・共同)
 著書に「歴史修正主義」がある学習院女子大の武井彩佳教授=2025年4月

 ドイツで「ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)はなかった」と公共の場で言えば、犯罪になる恐れがある。刑法130条「民衆扇動罪」第3項(ナチ支配下で行われた行為を是認、否定または矮小化)違反は、5年以下の禁錮刑または罰金だ。

 ヨーロッパの多くの国に、こうした歴史修正主義・歴史否定の言説を禁じる法がある。歴史に法律が介入しているようにも見えるが、実際にはヘイトスピーチの文脈で規制されている。ドイツ刑法130条は、1、2項が差別禁止で、3、4項がホロコースト否定やナチス賛美の禁止だ。

 ドイツ現代史に詳しい武井彩佳・学習院女子大学教授が解説する。(聞き手・共同通信=角南圭祐)

 ▽背景に政治的利益

 歴史修...

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