イスラエルとイランが停戦し、共に「勝利」を宣言した。イスラエルの攻撃から始まった10日余りの交戦の「敗者」は法の支配だ。ロシアのウクライナ侵攻を機に強まる「力こそ正義」の趨勢を助長した。

 国連憲章では、他国への軍事力行使は(1)武力攻撃を受け、自衛権を行使する場合(2)安全保障理事会が武力行使を容認した場合―に限って認められている。今回はいずれにも該当しない。

 ただし、相手国からの攻撃が差し迫っている場合は別だ。座して死を待つのではなく、先に攻撃に打って出るのは自衛権の範囲内と一般的に解釈されている。いわゆる「先制攻撃」である。

 しかし、攻撃が急迫していないのに将来的に攻撃される可能性を見据...

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