自身が営む喫茶店「・オリーブガーデン・」で藤井幸之助と手をつなぐ藤岡美千代。幼い頃、近所の家で読んだ本に描かれていたカエルの絵に心が温かくなった。「幸せの象徴」として店のあちこちに置いている=2025年5月、大阪市東淀川区(撮影・今里彰利)
 自身が営む喫茶店「・オリーブガーデン・」で藤井幸之助と手をつなぐ藤岡美千代。幼い頃、近所の家で読んだ本に描かれていたカエルの絵に心が温かくなった。「幸せの象徴」として店のあちこちに置いている=2025年5月、大阪市東淀川区(撮影・今里彰利)
 藤岡美千代が国に申請して届いた、父・古本石松の軍歴などが記された書類=2025年5月、大阪市東淀川区(一部をモザイク加工しています、撮影・今里彰利)
 父親が刃物を振りかざしたときのことを語る藤岡美千代=2025年5月、大阪市東淀川区の「・オリーブガーデン・」(撮影・今里彰利)
 インタビューに応じる藤岡美千代=2025年5月、大阪市東淀川区の「・オリーブガーデン・」(撮影・今里彰利)
 藤岡美千代の年表
 タイトルカット

 ベトナムに出征した米兵がうなされ、がばっと目を覚ました。藤岡美千代(ふじおか・みちよ)(66)は30年ほど前に見た映画の映像に引き込まれた。「これ、お父ちゃんちゃう?」。父も同じく、ばねのように飛び起きていた。オリバー・ストーンが監督したベトナム戦争を問う「天と地」。兵士は生きて国に戻ったが、精神に変調を来して家庭は崩壊し、自殺する。最期の姿を目にして確信した。「これ、絶対にお父ちゃんや」

 9歳の時、父は40代後半で死んだ。日々虐待され、下半身を触られる性暴力も受け続けた。心の片隅にさえ存在を置きたくなく、顔は忘れた。その父は確かに戦争に行っていた。幼心に混乱をもたらした行為の数々。戦争の影...

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