アムステルダムのカフェ「デ・エイスブレーカー」を出て、アムステル川の川岸に立つスティーブ・マックイーン監督(右)とビアンカ・スティグターさん=2025年3月(撮影・松井勇樹、共同)
 アムステルダムのカフェ「デ・エイスブレーカー」を出て、アムステル川の川岸に立つスティーブ・マックイーン監督(右)とビアンカ・スティグターさん=2025年3月(撮影・松井勇樹、共同)
 アムステルダムのアンネ・フランク像の前で足を止める観光客ら。近くには、フランク一家が隠れ住んだ家が博物館として残っており、年間120万人が訪れる=2025年4月(撮影・松井勇樹、共同)
オランダ・アムステルダム

 廊下に並んだロッカーの扉を一つ一つたたいて歩く男子高校生の後ろ姿を、カメラが追っていく。放課後だろうか。数人で談笑する姿がある。ふざけながら校舎から出ていく生徒たちも映る。

 オランダ・アムステルダムのヘリット・ファン・デル・フェーン高校。若者のありふれた日常風景だが、そこにかぶるナレーションはこうだ。

 「1941年、ここにナチス親衛隊の保安部とオランダ保安警察の本部が置かれた。アムステルダムで、市民から最も恐れられた建物だ」

 記録映画「占領都市」は、第2次大戦中、ナチスに支配されたこの街の恐怖や絶望を主題とする。だが当時の映像は一切使われない。130カ所にも及ぶ建物の今を映しながら、占領当時...

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