「80歳近くになって、もう書きたいものだけを書こうという気分になっている」と話す宮本輝さん
 「80歳近くになって、もう書きたいものだけを書こうという気分になっている」と話す宮本輝さん
 インタビューに答える宮本輝さん
 「潮音」第1~4巻
 インタビューに答える宮本輝さん

 市井の人々の喜怒哀楽を書き続けてきた作家の宮本輝さんが、初の歴史小説に挑んだ。「潮音」1~4巻を、1月から4カ月連続で刊行。「富山の薬売り」を主人公に、幕末から明治にかけての動乱の時代をたくましく生き抜いた民衆の姿を描いた。執筆の経緯や現在の思いを聞いた。(共同通信=米田亮太)

 ▽足を踏み入れまいと思ってきたが…

 ―初の歴史小説と銘打たれている。執筆のきっかけは何だったのでしょうか。

 「30年ぐらい前に、ある話をテレビか雑誌かで小耳に挟んでね。薩摩藩が幕府を倒すに至る背景に清国との密貿易があって、そこに富山の薬売りが一役買っていたという。面白いと思ったけれど、その時はやじ馬的な興味だけで、小...

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