むつみ庵に入居する80歳代の女性に寄り添う日高明。「どこまで行くん」と女性に聞かれ「ちょっとアメリカまで」。軽妙なやりとりで散歩に連れ出した=2025年5月、大阪府池田市(撮影・京極恒太)
 むつみ庵に入居する80歳代の女性に寄り添う日高明。「どこまで行くん」と女性に聞かれ「ちょっとアメリカまで」。軽妙なやりとりで散歩に連れ出した=2025年5月、大阪府池田市(撮影・京極恒太)
 築70年を超える古民家を使った認知症高齢者のグループホーム「むつみ庵」=2025年5月、大阪府池田市(撮影・京極恒太)
 むつみ庵でインタビューに答える日高明=2025年5月、大阪府池田市(撮影・京極恒太)
 むつみ庵の急な階段。手すりにつかまり1階に向かう入居者の女性=2025年5月、大阪府池田市(撮影・京極恒太)
 日高さんの年表
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 手すりはついているものの、古い日本家屋らしく狭くて急な階段がある。段数は15。そこを80歳代の女性がゆっくりと上っていく。「2003年の開設以来、階段での事故はゼロ。むしろ畳のへりなどの小さな凹凸でつまずくんですよ」。社会福祉士の日高明(ひだか・あきら)(43)は語る。

 認知症患者が利用するグループホーム「むつみ庵」(大阪府池田市)。

 築70年を超える木造2階建ての古民家を改修した高齢者施設だ。畳敷きでふすまに障子、土間、土壁、そして高い天井。コンセプトは「古き良き日本の田舎生活」で、バリアフリーにはほど遠い。ここで介護スタッフとケアマネジャーを務める日高は、哲学研究者でもある。

 ▽哲学とケ...

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