セメントの原料となる石灰岩の採掘で山頂が削られた香春岳を指し示す朴康秀さん。石炭を「黒ダイヤ」、石灰を「白ダイヤ」と呼ぶほど、鉱業は筑豊の産業の中心だった=2025年1月、福岡県田川市
 セメントの原料となる石灰岩の採掘で山頂が削られた香春岳を指し示す朴康秀さん。石炭を「黒ダイヤ」、石灰を「白ダイヤ」と呼ぶほど、鉱業は筑豊の産業の中心だった=2025年1月、福岡県田川市
 福岡県大牟田市の甘木公園の「徴用犠牲者慰霊碑」前に立つ藤木雄二さん=2025年2月
 林えいだいさんの著作を手にインタビューに応じる映画監督の西嶋真司さん=2025年2月、福岡市

 日本最大の石炭産出量を誇った福岡県の筑豊炭田。飯塚市、直方市、田川市、嘉麻市など広大な地域に炭鉱がひしめき、戦時中はフル稼働。過酷な労働に朝鮮人が動員され、戦後も多くの在日コリアンが暮らしている。

 田川市の法光寺には、炭鉱事故や病気で犠牲となった朝鮮人を悼む「朝鮮人炭坑殉難者之碑・寂光」がある。その碑文の一部が、歴史家たちから長年、誤りだと指摘されてきた。それは、次の部分だ。

 「この筑豊においても石炭採掘の労働力として約15万人の朝鮮人が強制的に連行されてきました。以降1945年までの強制労働と劣悪な環境の中で約2万人が坑内事故や病気で亡くなられました」

 指摘は「2万人の死者は多すぎる」とい...

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