
第173回芥川賞、直木賞の選考会で、いずれの賞も該当作なしと発表された
国内で最も有名な文学賞である芥川賞と直木賞がともに「該当作なし」となった。同時に選出がないのは約27年ぶりで、約90年の歴史で6回目と極めてまれ。出版不況下に年2回の「お祭り」として手堅い売り上げを見込む出版業界には大きな痛手となった。選考には第一線の作家たちが、それぞれの矜恃と文学観をかけて臨む。その責任下での「なし」の決断は、結果として賞の威厳と品格を守ったと言える。
1935年に始まった芥川賞と直木賞。このうち芥川賞は新進作家が対象だ。村上春樹さんや吉本ばななさんら、賞を授与するタイミングを逸してしまった作家が、その後、世界的な人気を得ていったケースもある。
現在の選考委員は両賞それぞ...
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