全国のミニ独立国の平和使節団として、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世と握手を交わす本間守拙・アルコール共和国大統領=1987年1月、バチカン市国

 日本から独立を宣言し、国をつくろう-。一見すると突拍子もなく思える「ミニ独立国」が40年前、新潟県内各地に誕生した。

 ミニ独立国は、住民や自治体などがパロディーで国家をつくり、地域おこしなどに取り組む活動。1980年代、作家・井上ひさし氏の小説で東北の小さな村が独立を宣言する「吉里吉里(きりきり)人」がヒットしたことをきっかけに、全国的に“独立運動”がブームとなった。全国で200カ国以上が建国され、新潟県内でも主だったものだけで八つの独立国が誕生している=下の図参照=。

 パロディーとはいえ、各国の取り組みは思いの外、本格的だ。中でも、1983年に旧真野町(現新潟県佐渡市)の酒造関係者らが中心になって立ち上げた「アルコール共和国」は、日本酒ブームなどを背景に全国的な知名度を獲得。全国のミニ独立国でつくる“国際連合”の常任理事国になった。87年には、初代大統領の故本間守拙(しゅせつ)さんらが平和使節団としてバチカン市国を訪れ、ローマ教皇に謁見(えっけん)した。

 89年に旧六日町(現新潟県南魚沼市)で誕生した「コシヒカリ共和国」は、自主流通米の入札取引で魚沼産コシヒカリと他地域産を区別して扱う別建て上場を成し遂げ、地域の農業振興に大きく貢献した。旧吉田町(現新潟県燕市)で91年建国の「若者共和国」も、歌手の吉田拓郎さんに町のテーマソングの作曲を依頼し、知る人ぞ知る名曲「吉田町の唄」が生まれるきっかけとなった。

 これらのミニ独立国は、ブームが去るとともに解散したり、自然消滅したりしたが、その足跡は確かに各地に残っている。特にユニークな活動を繰り広げた3カ国の跡地を訪ね、“遺産”を探った。...

残り3072文字(全文:3774文字)