雪の影響で先端が折れた電柱の撤去や電線の張り直しに当たる作業員=2022年12月22日、佐渡市
雪の影響で先端が折れた電柱の撤去や電線の張り直しに当たる作業員=2022年12月22日、佐渡市
薄暗い診療所内でランタンの明かりを頼りに受け付けする患者ら=2022年12月20日、佐渡市

 冬の新潟県内では、暴風雪や積雪の影響で停電が起きやすくなる。2013〜22年の過去10年をみると、12月と1月の2カ月間の停電回数が、年間の停電回数の半分近くを占めている。2022年12月には25市町村で延べ約8万5千戸が停電、佐渡市では復旧までに最長10日間かかり、日常生活に影響した。電力インフラを担う東北電力ネットワークは対策を進めるが、利用者側の備えも大事になる。

 佐渡市では2022年、集中的な降雪が原因で、12月18日から27日にかけて延べ約1万7200戸が停電した。自宅が1週間以上停電したという佐渡市の女性(44)は「暗さによる不安と寂しさを痛感し、長引くほど精神的につらくなった」と語る。

 女性は小学生の息子と2人暮らし。パンなどを食べつつ、石油ストーブと豆炭こたつ、懐中電灯で過ごした。自宅で携帯電話は充電できず、「口伝えか、出先で情報を得るしかなかった」。以来、太陽光発電のバッテリーを買い、食料の備蓄を増やすようにした。

◆大雪、氷に倒木…停電を「完璧に防ぐのは難しい」

 新潟県内での停電の発生は12月と1月に激増する=グラフ参照=。東北電力ネットワークによると、電線が切れたことなどによる県内の停電(高圧事故)は過去10年間に4332件発生。このうち、45%に当たる1940件が12月(1055件)と1月(885件)に起きた。

 原因別では、雪の重みで倒れた木が電線を切るなどしたケースが34%を占める。雪や氷が電線などの設備損傷の引き金となったケースも25%あり、雪国特有の事情が大きく影響している。

 東北電力ネットワーク新潟支社は、雪が付きにくい電線への交換や、設備近くの樹木を伐採するほか、巡視点検によるトラブルの未然防止に取り組む。一方で「自然相手で起こることを完璧に防ぐのはなかなか難しい」(担当者)と対応に限界があるとする。

◆2005年12月には「新潟大停電」 電気に頼らない寒さ対策を

 新潟県内では2005年12月に、下越地方を中心に最大約65万戸が停電した「新潟大停電」も起きている。冬季の停電では、エアコンやファンヒーターをはじめ、電気で動く暖房機器が使えなくなる。対策としては、照明や飲食料、カセットコンロとボンベ、バッテリーといった通常の備えに加え、寒さ対策が鍵になる=表参照=。

 防災の啓発に取り組む中越防災安全推進機構(長岡市)事務局長の諸橋和行さん(56)によると、電源が要らない石油ストーブと灯油の備蓄が効果的だ。石油ストーブはこんろ代わりになる製品もあり、「体を内から温めることもできる」と説明する。

 照明に関しては「懐中電灯やろうそくは夜に生活するには明るさが足りない」と指摘し、ランタンの使用を薦める。なければ、懐中電灯の光を、水の入ったペットボトルに当てると代用できる。

 食料の備えも欠かせない。諸橋さんは「普段食べているものを3日程度備えるのが基本」と話す。その上で「どれも、いざという時に機能するよう、日常点検や試しにやってみることが大切だ」と助言している。

新潟県内、現在の停電状況は?