夏休みに登山やキャンプを楽しみにしている人は多いだろう。体力と技術に見合った入念な計画と準備で、夏山を堪能してほしい。
2023年に全国で起きた山岳遭難は前年から111件増の3126件、遭難者は62人増の3568人で、統計開始以降それぞれ最多となった。死者・行方不明者は335人で前年より8人増えた。
本県の23年の山岳遭難は126件、遭難者は144人だった。
近年の健康志向などによる登山人気を反映しているとみられる。
警察庁によると、遭難原因は「道迷い」が最も多かった。
原因の一つには、現在地を把握する技術の不足が挙げられる。特に下山中は、水の流れていない沢を登山道と間違って迷い込んでしまうケースがある。
道迷いを防ぐには、登山用の衛星利用測位システム(GPS)アプリの使用が有効だ。本県は、アプリ「YAMAP(ヤマップ)」の運営企業と連携協定を結んだ。
アプリを利用し、事前に地図をダウンロードしてコースを指定すると、登山道から外れた際にアラームで知らせてくれる。
出発前にやらなければならないことは登山届の提出だ。登山届がない場合、遭難時の救助対応の遅れにつながる。
アプリで作成した登山計画を、正式な登山届として県に提出できる。遭難時には位置情報を警察や消防と共有し、迅速な発見につなげられるという。
ただ、アプリには電池切れの懸念もある。紙の地図やコンパスの携帯も忘れてはならない。
遭難者には高齢者が多い。個々の技術や体力に見合った登山計画を立てることが必須だ。
県のホームページなどで公開している、県内の山を技術的な難易度で5段階、必要な体力で10段階に分類した「グレーディング」は、計画作成の参考になるだろう。
日帰りの登山でも、ライトや雨具、非常食といった装備をきちんと確認してもらいたい。
低山も甘く見てはならない。スニーカーやサンダルで登る人も時々見かけるが、けがや事故につながりやすく危険だ。
午前中には山頂に着くようにするなど無理のないスケジュールで臨んでもらいたい。熱中症にも注意する必要がある。
クマに襲われないよう、鈴などを鳴らすことを心掛けてほしい。クマの餌になる食材の残りを放置するのは山のマナーにも反する。
高い山の場合は、天候急変による低体温症にも気を付けたい。
富士山では今夏から、夜通し登る「弾丸登山」防止のため、山梨県が入山規制ゲートの運用を開始した。富士山に限らず、どこの山でも無謀な登山は慎むべきだ。
11日は「山の日」だった。自然環境を大切にする意義や、山の恵みにも改めて思いを巡らせたい。