殺りくの場となり、連日のように多くの尊い命が奪われている。人為的にもたらされている飢餓も深刻化するばかりだ。イスラエルは非道極まる攻撃を、即時に中止すべきだ。

 パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとの戦闘を続けているイスラエル軍の攻撃を、イスラエルの二つの人権団体が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」だと認定する報告書をまとめた。

 地元メディアによると、国内の人権団体が自国軍の行為をジェノサイドと非難するのは初めてだ。

 イスラエル軍が目に余る攻撃を続けているということの証しであり、ネタニヤフ首相は重く受け止めねばならない。

 国際司法裁判所は昨年1月に、イスラエルにジェノサイドを防ぐよう命じる仮処分を出している。

 英国紙などは、ガザで殺害されたパレスチナ人の8割以上が民間人だったと報じた。市民の虐殺が疑われるシリアやスーダンの内戦と比べても、民間人犠牲の比率は高いという。

 25日には、南部ハンユニスの病院を無人機で攻撃し、医療従事者や患者、報道関係者を含む約20人が亡くなった。

 看過できないのは、同じ場所を時間差で攻撃し被害拡大を狙う「ダブルタップ」と呼ばれる手法を用いた可能性があることだ。

 最初の攻撃から約10分後、報道関係者や救助隊員が集まる中で2度目の攻撃が行われた。

 イスラエル軍はハマスが設置した監視カメラを狙ったと主張するが、これまでにも学校や病院を何度も攻撃している。

 2023年10月の戦闘開始後、死亡したジャーナリストは240人を超える。いかなる状況でも民間人は保護されねばならない。国際法を無視した蛮行を、許すことはできない。

 悪化する食料危機を早急に改善せねばならない。

 国連は、ガザの中心都市であるガザ市で飢饉(ききん)が起きていると発表した。安全保障理事会の全15カ国のうち米国以外の14カ国が27日、飢饉は「人災」だと批判し、ガザの封鎖を即時解除するようイスラエルに要求した。

 ガザ地区全体では50万人以上が飢餓や貧困の壊滅的状況にあるとの指摘がある。ガザ保健当局によると、飢餓や栄養失調による死者は300人を超えた。

 イスラエル政府がガザ市の制圧計画を承認したことも懸念される。住民を退避させた上で地上侵攻を強化するという。

 推定100万人がガザ市で避難生活を送っている。侵攻に踏み切れば、一層の人道危機を招くことは必至だ。

 イスラエルの最大の支援国である米国をはじめ各国は、一日も早く停戦に導き、ガザの状況をこれ以上悪化させてはならない。