自宅敷地にあるアトリエで布を裁断する居相大輝。「僕が作る服はモードというより、大切な人のために家庭で縫われてきたものに近い」=2025年4月、兵庫県朝来市(撮影・林昌三)
 自宅敷地にあるアトリエで布を裁断する居相大輝。「僕が作る服はモードというより、大切な人のために家庭で縫われてきたものに近い」=2025年4月、兵庫県朝来市(撮影・林昌三)
 花々が咲く庭で家族と過ごす居相大輝(右から2人目)。後方に見えるのは、妻の愛(同3人目)らと建てた土壁の自宅(右奥)と、渡り廊下でつながったかやぶき屋根の離れ。「住む場所を、この手で造る体験をしたかった」=2025年4月、兵庫県朝来市(撮影・林昌三)
 小屋から出したヤギに触れる居相大輝と家族=2025年4月、兵庫県朝来市(撮影・林昌三)
 居相大輝の服を羽織った吉井正喜(中央)=2025年4月、兵庫県朝来市(撮影・林昌三)
 居相大輝の年表
タイトルカット

 森の中を風が吹き抜ける。池の水面にさざ波が立ち、木の葉が揺れた。その風景を目にしたデザイナーの居相大輝(いあい・たいき)(34)は「そうしたら、たなびく感じにしよう」と、アトリエでハサミを手にし、曲線を描くように布を切り始めた。

 兵庫県朝来市で家族と暮らし、一点物の服を作る。デザイン画は描かず裁断や縫製、染色も1人で行う。季節の移ろい、ふと見た景色、布の手触り…。手がける作品は一瞬一瞬に感じたことの結晶だ。

 ▽ケアされる

 京都府内の高校を卒業後、「命を救う仕事がしたい」と2009年、18歳で東京消防庁に入庁、渋谷消防署に配属された。火事や事件事故の現場に駆け付け、意識不明の人を救助した。「亡...

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