「死刑について私たちが知っておくべきこと」
 「死刑について私たちが知っておくべきこと」

 6月27日、日本で約3年ぶりに死刑が執行された。法務省が執行を公表するようになった1998年以降で最長の空白期間となった背景には、確定死刑囚だった袴田巌さんの再審無罪が確定したことなどがあったとみられる。しかしこの間、死刑制度を巡る国民的な議論は乏しかった。

 それは前提となる知識が足りていないからではなかったか。刑事政策を専門とする著者は「被害者のため」とする感情論や「犯罪抑止力がある(ない)」といった根拠のない水掛け論から抜け出すことを求める。そして「時期尚早」という言葉で逃げることなく、国民全体を巻き込んだ議論をすべきだと訴える。

 その材料として、よく語られる言説にはデータで実態を示す。...

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