スズキ・トレーニング・メソッドを劇団員に指導する鈴木忠志。合掌造りの劇場に、緊張感が走る=2025年5月、富山県南砺市利賀村の利賀芸術公園(撮影・林昌三)
 スズキ・トレーニング・メソッドを劇団員に指導する鈴木忠志。合掌造りの劇場に、緊張感が走る=2025年5月、富山県南砺市利賀村の利賀芸術公園(撮影・林昌三)
 合掌造りの劇場でスズキ・トレーニング・メソッドを実践する劇団SCOTの内藤千恵子(右から2人目)ら。足踏みの音は迫力満点だ=2025年5月、富山県南砺市利賀村の利賀芸術公園(撮影・林昌三)
 稽古をする劇団SCOTの内藤千恵子=2025年5月、富山県南砺市利賀村の利賀芸術公園(撮影・林昌三)
 鈴木忠志は「演劇は世直しのためにやってる」と言う。山村から世界に向けて芸術を発信することで、東京一極集中に代わる新たな社会のモデルを提示しようとしている=2025年5月、富山県南砺市利賀村の利賀芸術公園(撮影・林昌三)
 鈴木忠志の年表
 タイトルカット

 合掌造りの古民家を改装した劇場に、力強い足音が響き渡る。黒いTシャツ、短パンの劇団員十数人が、足踏みをしながら整然と進む。続いて、木刀を振り、せりふを叫ぶ。みな、上半身は、ほとんど揺れない。激しく動いた直後に、ぴたりと静止する。

 それでも、演出家・鈴木忠志(すずき・ただし)(86)の怒声が飛ぶ。「型をやってる。感覚をやってない」「息が切れたからって、いいかげんな声を出すな」

 富山県南砺市利賀(とが)村の劇団SCOT。その俳優訓練法は「スズキ・トレーニング・メソッド」と呼ばれ、世界に広まっている。

 ▽解決は自分で

 鈴木は1966年、SCOTの前身・早稲田小劇場を東京で設立した。歌舞伎や不条理劇...

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