右が長谷川平蔵役の松本幸四郎((C)松竹)
 右が長谷川平蔵役の松本幸四郎((C)松竹)

 ドラマ「鬼平犯科帳」のエンディング曲として流れたジプシー・キングスの「インスピレイション」を聞けば、江戸の四季と共に歌舞伎俳優二代目中村吉右衛門を思い出す。ことほどさように“鬼平”こと長谷川平蔵は彼のことであった。そんなファンには、東京・歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部で松本幸四郎が主演する「鬼平犯科帳」は一種のイニシエーション(通過儀礼)である。

 原作は池波正太郎の人気時代小説。主人公平蔵は火付盗賊改方の長官で、古くは吉右衛門の父、初代松本白鸚が演じた。吉右衛門はか弱き者への慈愛と悪党への冷酷さを併せ持ち、さらに遊び心もある平蔵を30年近く体現。その当たり役を昨年、おいの幸四郎が継承し、テレ...

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