法律の改正により、新潟県内では衆議院小選挙区の定数が変わりました。新潟県は6から5となり、選挙区を分ける線引き(区割り)が大幅に見直されました。新たな区割りは住民に受け入れられているのかをテーマに記者が地域を歩き「新・衆議院小選挙区を歩く」という連載を掲載しました。取材後記をお届けします。第1回は新・新潟1区新潟市中央区、新潟市東区、新潟市江南区、佐渡で、報道部の中内風花記者(25)が歩きました(5回続きの1)。
今回のルポ企画が決まったとき、私は途方に暮れていた。
若者の政治離れが叫ばれて久しいが、私も例外ではなく、政治にはあまり興味を示さずに生きてきた。入社3年目。入社以来スポーツ取材漬けの日々を送ってきたため、政治取材の経験もほぼゼロ。ルポを書くのも初めて。「自分にそんなの書けるのか?」。不安でいっぱいだが、動かないことには始まらない。先輩記者の助言も踏まえ、舞台を佐渡市に絞った。
佐渡に行くのは2回目。全く土地勘はないが、「新選挙区を歩く」のタイトル通り島内を歩き、出会った人たちに新区割りへの所感を聞くことにした。

佐渡市の佐和田海岸
「堅いテーマだし、話してくれる人はいるのかな」「そもそもすれ違った若者がいきなり政治の話を出してきたら不審すぎるよな」…。もやもや考えながら、両津港からほど近い商店街に向かったが、その心配はすぐに吹き飛んだ。
散歩中の80代男性に声をかけてみると、「わざわざ新潟市から来たの。大変だね」といたわってくれた上に、「選挙のことはよく分からないけど、俺が思うに…」と時折考え込みながら、考えを話してくれた。
その後も佐和田海岸、真野公園など各地を歩いた。衆院新・新潟1区に賛成の人も反対の人も、取材を受けて初めて区割り改定を知った人も、こちらが付け焼き刃の知識で取材に臨んだことを申し訳なく思うほど、丁寧に答えてくれた。

佐渡の人の温かさを感じると同時に、人口減少の寂しさも感じた。平日午前に商店街を30分ほど歩いたが、すれ違ったのは片手で数える程度。時間が悪かったかなと、夕方に再訪したが、人はまばらなままだった。バスを待っていた70代女性が「昔はもっとにぎわっていたけどねぇ」と、寂しげに通りを見つめる姿が印象に残っている。
私自身、佐渡市が航路でつながる新潟市中心部と同じ新1区になったことは、8市町村にまたがった旧2区よりもコンパクトで分かりやすいと、好意的に捉えていた。

新潟市の中心街
しかし、島内を巡り、多くの声を聞く中で、佐渡市と新潟市の規模の差や地域課題の違いを肌で感じてみると、同じ候補者を選ぶ地域の間で、これほどの差があっていいものかと疑問を持った。
企画を通し、15人ほどに突撃取材に応じていただいた。区割り改定への賛否にかかわらず、ほぼ全員が人口減対策や地域活性化を望んでいた。政治取材1年目のひよっこ記者が言えたことではないが、区割り議論以前に、小さな地域を置き去りにしない政治が求められていると感じた。
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