新型コロナウイルス禍で、新潟県内でも手指のアルコール消毒がすっかり定着した。しかし「アルコールで十分」と、かえってトイレ後や食事前などの手洗いがおろそかになっていないだろうか。新型ウイルスの陰で、アルコールが効きにくい感染症の流行も見られる。専門家は「感染症予防の基本は流水とせっけんによる手洗い」と呼び掛けている。

【写真】感染予防の基本となるせっけんと流水での手洗い

 そもそも、なぜアルコールは消毒に使えるのか。新潟大大学院医歯学総合研究科の菖蒲川由郷(しょうぶがわ・ゆうごう)特任教授(44)=公衆衛生学=は、ウイルスの表面にある脂質の膜「エンベロープ」を挙げる。

 エンベロープはアルコールで破壊でき、これによりウイルスの働きを無くすことができるという。このタイプは「エンベロープウイルス」と呼ばれ、新型コロナウイルスのほか、インフルエンザウイルスなどが分類されている。

 ところが、もともと膜を持たない「ノンエンベロープウイルス」もあり、アルコールが効きにくいという。その一例がノロウイルス。「数十個の少ないウイルスでも感染する」(菖蒲川特任教授)という強い感染力が特徴で、主に冬に流行する。

 県の感染症情報によると、ノロウイルスを含む感染性胃腸炎の患者報告数は、今冬全体では過去5シーズンと比べて少なかったものの、2020年11月から12月にかけては前年同時期を上回った。保育園などで集団発生もあり、「一定程度の流行」(県保健環境科学研究所)が見られた。

 ノロウイルスの流行について菖蒲川特任教授は「アルコール消毒が定着した一方、手洗いがないがしろになっている感がある。そのことも関係しているのではないか」と推測する。

 ノロウイルスの流行期は過ぎたが、夏でも感染者が出ないわけではない。夏風邪の手足口病を起こすエンテロウイルスや、咽頭結膜熱(プール熱)の原因となるアデノウイルスも、同じくエンベロープを持たないタイプだ。ウイルスとは別に、細菌にもアルコールが効かないものがある。

 予防の基本は、やはり流水とせっけんでの小まめな手洗い。ノロウイルスなどが大便に多く含まれることも念頭に「トイレの後は手洗いが当たり前。ウイルスや菌を物理的に流し去ることが大事だ」(菖蒲川特任教授)。食事・調理の前や帰宅直後も手洗いのタイミングとし、介護や育児でおむつを処理した後もアルコールだけでは不十分という。

 菖蒲川特任教授は「新型コロナウイルスの予防も、今ではアルコール消毒でもよいといわれるが、初めはきちんとした手洗いが呼び掛けられていたはず」と語り、原点に立ち返る大切さを指摘した。

【図表】