中越酵母工業の大型タンク。酵母を少量から培養していく=長岡市摂田屋4
中越酵母工業の大型タンク。酵母を少量から培養していく=長岡市摂田屋4

 国内外で活躍している製品と生み出す技術。身近にありながら、地域を越え、広く社会を支えている企業は多い。人口減少、若者の流出が課題となっている今、新企画「誇るモノワザ」は、新潟県の地元企業の力を改めて見つめ直す。

 長岡市摂田屋4の中越酵母工業は、パン作りなどに欠かせない酵母(イースト)の製造販売を専門とし、食品会社に供給する。全国で4社しかない珍しい業種だ。微生物である酵母と向き合い、培養技術を高め、酵母の特徴を踏まえた活用を図る。近年活発化している地ビールやウイスキー醸造も、陰ながら支えている。

 戦後、食糧難で米国などから小麦粉が届けられると、日本国内でパン食が普及。酵母の需要が高まり、各地で製造販売会社が生まれた。1947年設立の中越酵母工業もその一つ。隣接する酒蔵の吉乃川の子会社で、日本酒造りに用いる酵母のノウハウを生かそうと立ち上げた。

 酵母は種類によって、発酵で生まれる風味もさまざま。食パン向きや総菜パン向き、ビールならピルスナー用やエール用などがあり、適性を把握して選ぶ必要がある。

 製造は、試験管のごくわずかな量から培養を始めて、サトウキビを原料とする糖蜜や酸素を与えながら、徐々に増やしていく。木戸隆・技術品質管理部長(53)は「畑で野菜を育てるイメージ。必要とする栄養と酸素を与え、酵母が自分の力で増えていく」と説明する。

試験管に保管されている酵母

 酵母が増えるにつれて...

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