新潟県内では、最高気温が20度を上回る日も増えてきた。冬場に比べて穏やかになってきた日本海へ、釣りに出かける人も多いのではないだろうか。釣りの経験がない記者は、今年初めて長岡市寺泊地域の遊漁船に乗った。きっかけは長期連載「碧(あお)のシグナル」の取材。日常生活ではなかなか味わえない感動だった。少しでも遊漁船の魅力が伝わればと、釣り体験記をお届けします。(報道部・小林夕夏)

遊漁船の魅力を語ってくれたのは、1970年ごろ、寺泊地域で初めて遊漁船を始めた「作十丸(さくじゅうまる)」の船長、五十嵐利男さん(79)。「天気のいい日は気持ちがいい。朝日や山を見るだけでも癒やしだ」という言葉に引かれた。
作十丸を利用する釣り人は、2〜5月はメバル、5〜6月はマダイ、夜はスルメイカを狙う。秋になるとイナダやアジがターゲットになる。

いろんなルアーでゲーム性を楽しむ遊漁船が増えてきた中で、作十丸はかつてから人気の餌釣りにこだわる。ルアーだとしょっちゅう竿(さお)を操る必要があるが、「ぼーっと座りながら楽しみたい人もいるのではないかと思って」と五十嵐さんは語る。
自分で準備したのは酔い止めだけ…
作十丸のホームページで出船予定をチェックし、予約の電話をかけると五十嵐さんの奧さんが出た。「5時半に出航するから、5時までに来てね」。釣り竿や餌は用意してもらえるそうだ。手ぶら状態で体験できるのはありがたい。船酔いに備え、ドラッグストアで酔い止めを購入。準備は整った。

3月上旬、自宅から車で約1時間半かけ、夜明け前の寺泊港に向かった。港に着くと、作十丸のライトが光っていた。作十丸には既に9人の釣り人客が乗船していた。港から船に乗りやすいようにと、手すりが付いている。これを頼りにひょいっと船に乗り込む。
「ここがあなたの場所ね。私の隣」と、船に固定された釣り竿に案内してくれたのは、清水いづみさん(60)。作十丸の常連客で、今日は初心者の私の釣りをサポートしてくれる。
作十丸の操業をサポートする“手伝い人”は4人いる。五十嵐さんは船を操縦する時、基本的に操縦席から出ることができない。手伝い人たちは、釣り人のサポートのほか、操業前の準備と後片付けにも汗を流す。「こういう人たちがいないと、80歳になってやってられないですよね」と五十嵐さんは感謝する。

午前5時半、船が出航した。漁場までは...