特殊詐欺の被害件数が2023年に増加した新潟県警三条署管内で、被害防止の対策が次々と講じられている。被害が多い世代の年金受給者には、金融機関が訪問時に啓発。電子マネーカードを悪用する手口に対応するため、コンビニエンスストアには警察官お手製の道具が配備された。三条署は「被害防止に特効薬はない。打てる手は何でも打つ」と必死だ。
三条署によると、三条市内での2023年の特殊詐欺被害は18件、総額3127万円。前年から4件、1170万円分増加した。被害者のほとんどが60代以上で、この層の防犯意識の引き上げが鍵となる。
1月下旬、三条信用金庫本店の職員(28)が市内の男性(71)を訪ね、注意を呼びかけた。「能登半島地震の義援金を募る電話など詐欺的なトラブルが発生しています。気を付けてください」
この訪問の本来の目的は、三条信用信金に年金受取口座がある人の誕生日前後に、職員が記念品を手渡して祝うもの。何十年と続く取り組みだが、今年からは新たに特殊詐欺への警戒も促し、最新の犯罪手口などを伝えるようにしている。
三条市内外の本支店全26店舗で訪問の対象は1カ月当たり計1000人を超える。三条信金常務理事の長谷川宗克さん(57)は「日々の工夫で幅広く注意を促せる。市民の大切な財産を守りたい」と意気込む。
▽コンビニ店員に「警戒ストラップ」
コンビニで電子マネーを購入させ、だまし取る手口も対策が急務だ。最近はパソコンの警告画面でウイルスに感染したと装い、支払いを要求する「サポート詐欺インターネットを閲覧中のパソコンに「ウイルスに感染した」と偽の警告文を表示し、サポート窓口と称する番号に電話させてウイルス除去費名目などで金銭をだまし取る詐欺。消費者庁や国民生活センターによると、警告文はウェブサイトに広告が出る仕組みを悪用して表示させており、10〜90代と幅広い年代が被害に遭っている。」が目立つ。
レジで客の行動に違和感を抱き、店員が阻止することもある。だが、コンビニ側からは「女性や若い学生の店員にとって、男性客に声をかけることは勇気がいる」との声が上がる。
そこで三条署は、コンビニ店員の首にかけてもらうストラップを作成した。手書きの文字で大きく「特殊サギ多発 使用目的確認中 三条警察署」と表記。その脇に真剣な顔つきの女性警察官のイラストを配した。絵心のある三条駅前交番の土田美紀子さん(43)が描いた。他に2パターンがある。

特殊詐欺への警戒を示すストラップ。被害が疑われる人にコンビニ店員が声かけする際に役立つ=三条市下坂井
2023年12月、三条市内の30店舗以上に配布した。セブン-イレブン三条下坂井店の古川康司店長(43)は「ストラップをお客さまに提示すれば、警察からの要請で声かけをしていると納得してもらえる。店員も行動を起こしやすくなる」と歓迎した。
▽「ダミーカード」で水際対策
さらに三条署が1月に完成させたのが、電子マネーの「ダミーカード」だ。
このカードは「ウイルス除去費用」「サイト利用料金」など、特殊詐欺で電子マネーをだまし取られる際の主な名目を印字。「このカードをレジまでお持ちください」と記している。
カードは全体が黒地で、黄色や白で印字されており、目に付きやすい。コンビニの電子マネーカード売り場の棚に並べる。

電子マネーの「ダミーカード」。特殊詐欺でだまし取られる際の主な名目を印字し、これをレジに持ってきた人に声かけすることで被害を防止できる
三条署生活安全課の荒井大輔課長(41)は「被害に遭う人は電子マネーの購入に慣れていない。ダミーカードに手を伸ばす可能性は高く、レジで被害を防止できる」と説明。他の県警で導入し、被害を防いだケースもあるという。
荒井課長は「お金をかけなくとも、知恵を絞れば、被害防止の効果は上げられるはずだ」と力を込めた。
× ×
新潟日報デジタルプラスでは、特殊詐欺に関係した記事をまとめて読むことができます。不審な電話やメールなどがあったら、過去に起きた被害の手口を確認してみてください。
▼合わせて読みたい
新潟県内でも被害が多いパソコンの画面に「ウイルス感染」などの文字が表示され、「サポート」をうたって「電子マネーカード」などの番号を聞き出す「サポート詐欺」について注意を呼びかける記事▶こちらから
詐欺の手口などを紹介
▶幅広い年代で被害、新潟県警「電話やメールでお金の話が出たら詐欺」
首都圏から地方の高齢者狙う特殊詐欺、「発生地主義」の各県警の弱み突く