
東日本大震災の被災地を度々訪れてきた。被災地に赴くたびに、再生していく街並みに驚き、つらく悲しい「あの日」から一歩を踏み出そうとする被災者に出会う。
岩手県で被災した人々を取材した時に「復興を感じた瞬間はいつですか」と聞いたことがある。年齢も性別もばらばらの被災者から返ってきたのは「三陸鉄道が走りだした時かな」という言葉だった。
三陸鉄道は、岩手県の太平洋沿岸を南北に結んでいる。部分開通していた国鉄の路線に未開業区間を加え、1984年に南リアス線(盛(さかり)-釜石)、北リアス線(宮古-久慈)の計107・6キロが開通した。交通が不便だった三陸地方で、通勤や通学の手段として貴重な役割を担った。...
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