
「警察学校の1日体験入校があるんだけど、取材してみない?」。5月のある日、記者クラブの上司に声をかけられました。2024年の春に新潟日報社に入社し、新潟県警担当の記者になって1カ月ほど。それまで警察官とはほとんど関わりがなく、「なんか怖そう」という印象でしたが、同時に「どんな気持ちで警察官を志したんだろう」と興味もありました。気がつけば、上司の提案に「やります!」と答えていました。厳しく過酷なイメージで語られがちな警察学校。他社の報道記者たちと同行取材することになりました。20歳の新人記者がそこで見たものとは…。(報道部・長尾胡春)
~いざ入校!すぐヘトヘト~
今回密着取材するのは高校や専門学校を卒業した人を対象とした「長期課程クラス」。2024年の春に高校を卒業した18歳から社会経験のある27歳までと年齢差の幅広い25人のクラスです。10カ月間かけ、仲間と共に寮生活を送りながら、警察官としての自覚を養い、知識や技術、体力を身につけます。
1日入校取材は6月13日午前6時半に始まりました。寝起きとは思えないキビキビとした動きや、「おはようございます!」の大きな声に圧倒され、眠気も一瞬で吹き飛びました。

まずは点呼です。グラウンドに整列し、教官が姿を現すと空気が一瞬にして張り詰めます。教官にクラスのメンバーの健康状態や出席状況を報告。その後、1周約500メートルのグラウンドを2周します。学生たちは余裕の表情。一方、運動とは長らく無縁だった私は既にヘトヘトで、先の訓練が思いやられます。

~世界一受けたい「指紋採取」~
1時間目、瓶の指紋と掌紋の採取を体験しました。
瓶に自分の指紋を付けたら採取スタート。ブラシで粒子の細かいアルミ系のグレー粉末を瓶に付けると、一気に指紋が浮かび上がります。ある程度粉末を付けたら、ドラマでおなじみのふわふわとした「ダスターはけ」で余分な粉をやさしく落とします。鑑識といえば思い浮かべるこのダスターは、てっきり粉を付けるための道具だと思っていました。

粉を落とすと指紋の線一本一本がくっきりし、「特徴点」と呼ばれる線の分岐点や端点が分かりやすくなります。よくドラマで指紋をコンピューターでスキャンし、「指紋一致」といった場面を見ますが、実際は目視で12点以上の特徴点があるかを確認しているそう。ドラマとのギャップに驚きの連続でした。
インクを使っての指紋採取にも挑戦。開發(かいほつ)ななせ巡査(18)とペアになり、はんこのように紙に押しつけて指紋を採取します。
ところが、インクの濃淡のムラで指紋がつぶれたり、開發巡査の手のひらのへこみにインクが付かなかったりと大苦戦。「次はもう少しインクを濃く付けてやってみましょう」。開發巡査にアドバイスをもらい、教官にもこっそり教えてもらいながらやっと採取できました。
本番は決して失敗できない一発勝負。責任の重い、繊細な作業だと実感しました。

2時間目は交通関連のことを学びました。朝から体も頭もフル回転です。
~5分で完食!学校メシ~
そして待ちに待ったこの時間がやってきました。「いただきます!」。元気な声が食堂に響きます。この日の昼食メニューはオムライス。訓練中はキリッとした顔つきの学生たちも食堂では表情が和らぎます。

笑い合い、食事をする姿は、まるで在りし日の学校の昼休み。ただ、唯一の違いは食べるスピードです。次の訓練準備も昼休憩に含まれるため、ゆっくりはできません。学生は5分ほどで完食。記者たちだけが取り残されてしまいました。急いで食べ、午後の訓練に備えます。


~オラオラオラ!警備訓練~
最後に体験したのは、暴動などへの対応を想定した「警備実施」。学生たちからも一番きついと耳にしていた授業です。この日はあまりの暑さで半袖の指示が出ましたが、普段学生たちは出動服と呼ばれる長袖長ズボンに帽子や軍手、鉄板が入った警備靴。立っているだけで汗ばむ格好です。
開始早々、...