密閉性の高い容器を用い、原酒の風味を保っているのが特徴の「KEG 山間」
密閉性の高い容器を用い、原酒の風味を保っているのが特徴の「KEG 山間」
新潟第一酒造=上越市浦川原区

 酒造業の新潟第一酒造(新潟県上越市浦川原区)が、日本酒の原酒の風味を維持する新手法を導入した。県内では初めての取り組みで「KEG山間(ケグやんま)」の名称で3月に販売を始めた。絞りたての味わいをフレッシュなまま長期間保てる特長があり、全国展開のほか海外輸出も視野に入れている。

 日本酒の原酒は醸造の過程で発生した炭酸ガスを含むが、瓶やタンクへの充塡(じゅうてん)や保管の間に徐々に揮発していく。この間に熟成されてまろやかな味わいになっていくが、原酒とはやや風味が変わる。

 ケグ山間は、耐圧性があり密閉性の高いプラスチック製容器を使う。まず大気圧の3倍程度の圧力をかけながら充塡することで、原酒内に炭酸ガスを強制的に溶融させる。その後の保管時にも密閉性が高いため酸素が入り込まず、絞りたての状態が維持できる仕組みだ。自社銘柄の「山間」の一部に使い、新たな商品名を付けた。

 この方法は、酒類卸売業のクリップクリエイティブ(兵庫県明石市)が「KEG DRAFT(ケグドラフト)」の名称で考案した。新潟第一酒造の武田良則代表取締役が2024年夏、県外の酒関連イベントで試飲し「新鮮さに衝撃を受けた」。その場で導入を決断し、会場にいたクリップ社と交渉をしたという。クリップ社によると、全国の醸造元では約60蔵で採用例があるが、新潟県では新潟第一酒造が初めて採用した。

高い圧力をかけながら原酒を容器に充填するスタッフ=上越市浦川原区

 ケグドラフトの純米クラスは10リットル2万3千円前後、純米吟醸クラスは、2万5千〜3万円前後に設定している。上越市内だけでなく県外の飲食店からも引き合いが来ており、新潟市内で3月8、9日に開催された「にいがた酒の陣」でも提供された。

 今後は、新鮮な状態のまま保管できる特性...

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