「駅北子育て支援複合施設(仮称)」の予定地(本社小型無人機から)
「駅北子育て支援複合施設(仮称)」の予定地(本社小型無人機から)

 県内現役市長では最多当選で、糸魚川市長を5期20年務めた米田徹市長(76)が退任する。2005年、旧糸魚川、能生、青海の1市2町による合併で始まった新市の歩みと自身の任期は重なり「地域の一体感醸成に一番力を注いだ」と総括する。一方、人口減少の加速などには苦慮し「やり残したことは多い」と自己評価も語った。13日に告示となる糸魚川市長選にはいずれも新人で市議の伊藤麗氏(34)、元教員の久保田郁夫氏(67)、市議会副議長の横山人美氏(59)の3氏が無所属での出馬を表明。三つどもえとみられる戦いを前に、長期市政が残した課題を探る。

 5期目の米田徹糸魚川市長(76)の任期最終盤に足踏みしている大型案件がある。屋内遊戯施設などを設ける「駅北子育て支援複合施設(仮称)」計画だ。

 2016年の糸魚川大火からの復興まちづくり事業の一つ。これまで進めた防災機能を備えた広場整備や被災地の無電柱化など70余に上る事業の、最後を飾るはずのプロジェクトでもある。

 足踏みの理由は整備に必要な既存のビルの解体工事に着手できないためだ。入札が今年1月まで5回にわたって不調となり、市は入札方式の見直しなどを進める。

 「見直しには時間を要する。新年度に改めて対応していきたい」。今年2月5日の市議会総務文教常任委員会。米田市長は複合施設の供用開始時期を予定していた28年4月から29年4月に先送りすると表明した。

 複合施設は被災跡の同市大町2に整備予定で、総事業費は約14億3千万円(24年度現在)。中心部の都市機能を高める都市構造再編集中支援事業として進め、国費を充当するなどして、市の実質の負担額は約2億6千万円と見込む。

▽計画発表後も論争やまず

 23年初めに基本計画素案を市民向けに公表して以降、特に市議会の委員会審議や一般質問で、その是非を巡る議論に多くの時間が費やされてきた。

 24年の3月議会で、施設整備を進めるための債務負担行為の議案が賛成多数で議決され、進むかに見えた。しかし、解体工事の入札不調で先が見通せない。市は不調の理由を明らかにしないが9800万円に設定されている解体工事費の不足とみる向きもある。議会での論争も再び熱を帯びている。

 計画に異を唱える市議は主に「保育料や給食費補助など他の子育て支援を」と訴える。維持管理費は年間約5千万円が見込まれ「負担は重い。既存施設を有効活用するべきだ」などと求めてきた。

 市側は「屋内遊戯施設は市民アンケートなどで...

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