
1945年8月6日の惨劇を今に伝える原爆ドーム=広島市
1979年、社会学者のエズラ・ボーゲル米ハーバード大教授(2020年没)が出版した「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が日米でベストセラーとなった。その書名が多くの評論家の目を引いたが、副題も魅力的だった。それは「米国への教訓」であった。
彼は時折、間違った理由で著書が売れたと冗談を言っていた。日本の経済的奇跡の背後にある要因を説明しようとしたが、恐らくそれ以上に強い動機となったのは米国の衰退に対する憂慮だった。日本社会には米国の教訓となる要因が含まれていると考えたのだ。
日本に住んでいると、私は定期的にボーゲル氏の本を手に取り、考えを巡らせる。米国が同盟国や敵国、そして恐らくは自身にも見通せな...
残り1554文字(全文:1854文字)