東北芸術工科大名誉教授の田口洋美さん
 東北芸術工科大名誉教授の田口洋美さん

 現在、野生動物の生息域が拡大している。特にクマ類やシカ、イノシシ、サルなどの大型獣に顕著で、個体数も増加傾向にあると考えられる。その要因として、私たち自身の生き方の変化が影響している、というのが代表的な見方だと言える。

 明治に入って以降、農林水産業、いわゆる第1次産業を基盤とした社会の構造が大きく変わった。都市部の居住者が増えて人口の分布が偏重してきた。結果として、野生動物たちがもともと生息していた中山間地域などから、人々が撤退してきているのである。

 私たちは、撤退後の土地の使い方や自然の扱い方といった、国土のグランドデザインに関する積極的な議論を怠ってきた。その間に、野生動物は自分たちの生...

残り1113文字(全文:1413文字)