戦後80年間、国際社会が協調の理念に基づいて築いた世界の経済秩序は何度も試練にさらされながら、その命脈を保ってきた。だが「自国第一主義」を掲げるトランプ米政権によって秩序は大きく揺らぎ、今の世界経済は安定を欠く。さらなる事態の悪化を避けるため、国際社会の知恵と実行力が問われる。
第2次大戦の惨禍を経て各国・地域は、経済的安定こそが平和の礎であるとの認識に立ち、米国主導で為替相場の安定と貿易自由化を柱とした「ブレトンウッズ体制」を戦後間もなく発足させた。これは戦争の遠因だった通貨の切り下げ競争を防ぎ、戦後復興に必要な貿易の円滑な拡大のための決済システム構築を目指した経済秩序だ。
この秩序は波乱...
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