
香山リカ
都市圏に住んでいるのに医療も教育も受けられない。すぐには想像できない事態だ。
9月、私も所属する北海道パレスチナ医療奉仕団が招いたサリーム・アナティ医師が、全国6カ所で講演を行った。そこで語られたパレスチナ人の生活の生々しい実態に、多くの参加者が言葉を失った。アナティ医師は、現在イスラエルが実効支配する東エルサレムのシュファット難民キャンプで生まれ育ち、海外で医療を学び、帰国して同キャンプの診療所などで医師として活動してきた。
東エルサレムでは、イスラエルが建設した分離壁や検問所によって移動が厳しく制限されている。そのため、エルサレム自体の医療水準は非常に高いにもかかわらず、パレスチナ人患者...
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