株式会社LIXIL(以下LIXIL)は、能登の伝統的風景を未来へと継承していくための共同プロジェクトについてストーリーを公開します。
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左から、LIXIL常務役員 羽賀豊、永山祐子設計事務所代表 永山祐子氏、珠洲市長 泉谷満寿裕氏、CACL奥山純一氏
CACL×永山祐子建築設計×LIXILによる共同プロジェクト始動
LIXILは、株式会社CACL(以下CACL)、有限会社永山祐子建築設計(以下永山祐子建築設計)の2社と共同で、令和6年能登半島地震で倒壊した家屋に使われていた黒瓦を建材にアップサイクルし、新たに建築物へ使用するためのプロジェクトを2025年9月1日に発足しました。
プロジェクト発足に際し、発足日に石川県珠洲市役所にて3社共同プロジェクトの発表会を開催。CACL代表の奥山純一氏、永山祐子建築設計代表の永山祐子氏、珠洲市長 泉谷満寿裕氏、LIXIL常務役員 羽賀豊が登壇し、本プロジェクトへの想いを語りました。そして、プロジェクトに関わる協力会社の方、自宅の黒瓦を本プロジェクトに使うことになった市民の方のお話もうかがいました。記事では、当日の様子をレポートします。
永山祐子氏、LIXILとの協働によるCACLの新たな挑戦
まずは、CACL代表の奥山氏が、本プロジェクトについて紹介しました。
奥山:CACLは2023年、石川県能美市で創業しました。陶磁器の破片を回収しアートやプロダクトに活用してきましたが、震災後は珠洲焼や輪島塗の職人とも連携し、伝統技術を未来につなぐ作品づくりに取り組んでいます。
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黒瓦は釉薬が黒光りするのが特徴で、大判で厚みがあり、熱を蓄えることができます。(雪がたくさん積もって重くならないように)雪が溶けて滑り落ちるような瓦です。
黒瓦が割れた際にオレンジ色が見えるのも特徴で、黒色とオレンジ色の対比が非常に美しいと思ったことを今でも鮮明に覚えています。
珠洲市では公費解体が進んでいますが、全壊、半壊の家がまだまだ残っており、10月まで解体工事が続くと言われている状況です。工事を進めていくなか、住民の方から「壊れた家を見ていると、寂しさや悲しみを感じる」と言われました。解体が進んで更地になっていく様子を見ているうちに記憶が薄れ、そこにかつてどんな景色があったのか思い出せなくなってしまった、マイナスになってしまうような気がする、と。
こうした能登瓦との出会いを通し、かつて存在していた家屋に使われていた瓦、地域の想いや記憶を未来へとつなぐシンボルにできないかと考えるようになりました。
今回、3社でプロジェクトを行うことになったのは、永山祐子建築設計とは過去のプロジェクトでつながりがありまして、そのご縁でLIXILをご紹介いただきました。
私たちの動きと同じタイミングで、建材のアップサイクルという課題に共鳴して模索されてきたLIXIL、そして永山祐子建築設計と3社でプロジェクトを立ち上げることになったのです。
公費解体とは、家屋の所有者の代わりに市が倒壊家屋を解体するシステム。廃棄物の仮置き場に運び、全国の処分場で最終処分をするというのが従来の流れですが、今回のプロジェクトでは、公費解体後に珠洲市内に我々が用意した一時保管場に移し、指定業者により粉砕された素材を使いマテリアルを作り、再利用するという仕組みとなります。粉砕は能美市の業者、粉砕後の梱包などは珠洲市の事業者に行っていただきます。
私たちCACLが担うのは全体のコーディネートで、LIXILにはマテリアルの機能面を、永山祐子建築設計には意匠面を主にご担当いただいている形です。
オレンジ色、黒色の部分がちりばめられていて、風合いのあるあたたかみのあるマテリアルになりました。
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珠洲市に根付く黒瓦という誇りと、失われゆく黒瓦を活かすプロジェクトへの感謝
珠洲市長の泉谷満寿裕氏からは、プロジェクトへの想いをお話いただきました。
泉谷市長:昨年(2024年)元日に起きたマグニチュード7.6の地震、津波、さらには昨年9月の奥能登豪雨によって、極めて甚大な被害が生じました。災害関連死の方も含めると、184名。多くの方々の尊い命が失われてしまったのです。
住宅の被害も極めて甚大で、市内では震災前に5,600世帯ほどあった住宅のうち、およそ3割となる1,777世帯あまりが全壊、3,900世帯あまりが半壊と、7割以上が半壊以上という被害を受けました。このうち、公費解体を申請した世帯は2,800あまりです。珠洲市では、現時点で公費解体の89%が完了。黒瓦は珠洲市の特徴であり、誇りであり、宝ですから、どんどん解体されて失われていくことに対して、居たたまれない気持ちでいます。
こうしたなかで、CACLと永山祐子建築設計、LIXILの共同プロジェクトが展開され、黒瓦がまた活かされていくことは本当にありがたいことで、心から感謝をしています。こうした取り組みが、さらに広がりを見せていただければと思います。
黒瓦再生の仕組みを支える4つのステップ
奥山:今回のプロジェクトは、大きく4つのステップに分けられます。まず一つ目が、先ほども申し上げました、公費解体に合わせた黒瓦の回収。二つ目が、回収した黒瓦の粉砕。三つ目が、粉砕した破片の梱包、発送。そして、マテリアルの生産です。
住民の方が市に公費解体を申請したのち、家屋の屋根から黒瓦を解体します。通常であれば、市の仮置き場に運び、全国の処分場に運ばれて最終処分されるところを、我々が用意した仮置き場に運んでもらい、そこから粉砕に特化した能美市の会社が粉砕、その後CACLがLIXILに素材として販売するという流れになっています。
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黒瓦を取り入れ、文化と歴史を宿す新たなマテリアルへ
羽賀:LIXILは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」をパーパスとして掲げています。キッチンやお風呂、トイレ、窓や玄関、インテリア、エクステリアといった幅広い商品を扱う一方、環境への貢献を企業として非常に大きく掲げています。
そのなかで、社内での素材開発にも取り組んでいます。リサイクルアルミを活用して製造時のCO₂排出量を大幅に削減する循環型低炭素アルミ「PremiAL(プレミアル)」(https://www.lixil.co.jp/lineup/s/premial/
)や、従来は再資源化が困難だった廃プラスチックを原料としている「revia(レビア)」(https://www.lixil.co.jp/lineup/s/revia/
)などがその一例です。
さらに、「textone(テクストーン)」(https://newsroom.lixil.com/ja/2024040501
)という素材も2024年に開発しました。セメントやパルプを使い、これまで処分されてきた籾殻の炭などを混ぜ込むことで、再び価値のある素材に変えていく取り組みです。作られた素材は、意匠材として内装、外装で使っていただけます。特長のひとつは、素材の質感の高さです。
この「textone」の新たな挑戦として、今回取り組んだのが粉砕した黒瓦の使用です。永山祐子建築設計のご協力、アドバイスもいただきながら仕上げました。最初、結構黒いのかなと思っていたのですが、瓦を粉砕していくと中からオレンジ色が出てきまして、このオレンジ色が素材にいい風合いをもたらしてくれているのではないかと思っています。
今回のプロジェクトでは、本来破棄されてしまう地域に根差してきたものがもう一度価値を生むことに大きな価値があると感じています。黒瓦を使って作ったマテリアルは、地域の土を焼いたものからくる独特の色が活かされています。黒瓦は地域の文化、歴史を持っているもので、個人単位でみると自分の家にもつながっているものです。単なるリサイクル素材ではなく、文化、歴史とつながる新たな価値を見つけることができ、このプロジェクトに関わらせていただいたことを非常に誇りに思っています。
建築によってリユースを仕組み化し、循環を生み出す挑戦
永山:CACLの奥山さんと出会ったのは偶然で、場所はイタリア、ヴェネツィアでした。「こういう瓦を使っているんです」と、小物やアート作品といった小さなものを作られているというお話をお聞きし、「こうした石畳など、もっと建築に使ったらいいのでは」とヴェネツィアの石畳を見ながら会話したことを覚えています。
一方、LIXILの羽賀さんとは以前から知り合いでして、アップサイクルの面白い事業に取り組んでいるということで、一度すべて見せていただく機会がありました。そのときにtextoneを見て、おもしろいなと。奥山さんから黒瓦を託されていたので、「これに混ぜ込めるかもしれない」と考え始めました。
そこで、いきなりLIXILに破片を送り付け、「これを入れてみてください」とお願いしたところ、すぐにサンプルを作っていただいたのですが、最初はあまり模様が出なくて。「こうやって磨いたら出るのでは?」と話すと、すぐに試してくださいました。そうすると、本当にきれいな模様が出たんです。世の中的にも、あたたかい色、土の色を求めているので、これからこういった素材が求められていくのではと感じました。
CACLとは、玉川高島屋の中にあるテラゾーベンチの取り組みも一緒に行っています。捨てられる焼き物の破片を入れることで、不思議な形が表れ、美しいんです。「モノとして美しい」ものを目指して作ることには、まだまだ発展性があると思っています。今回、黒瓦を使って作ったtextoneも、まずは私が大型商業施設に使うことが決まっていますが、ぜひ皆さんにも広く使っていただきたいと思っています。「こういうことができるなら、もうちょっとこうしたらどうだろう」と一緒に考えていくことで、もっとおもしろいことが広がっていけばいいなと考えているので、何かあればぜひ言ってきていただきたいです。もっと巻き込んでいけるようになりたいと思っています。
震災で失われゆく黒瓦を未来へ――住民の想いと企業の協働が生む新しい循環
解体会社である有限会社セーフティの社員鍛治建汰さん、ご自宅が公費解体することになった谷地前吉昭さんにもお話を伺うことができました。
解体された黒瓦が置かれている資材置き場で鍛治建汰さんにお話を伺い、実際に黒瓦に触れることもできました。黒瓦は1枚当たり4〜7kgほどと重く、解体は安全面を考え、瓦業者に依頼されているとのこと。3社による取り組みについて、「珠洲で処分され、なくなってしまうものが新しく使われる良い取り組みだと思います」と語っていました。
続いて、ご自宅を公費解体することになった谷地前吉昭さんの自宅前へ。谷地前さんの自宅は築50年。震災当日は、谷地前さんご夫婦、孫一家の6人が過ごしていました。地震発生時は飲んでいたビールの中身がなくなり、冷蔵庫の扉が開き、その扉を閉じに歩いていけないほどの揺れを感じたといいます。自宅は4年前にリフォームを終えたばかりでしたが、外に出たらリフォームした箇所の壁が傾いていて「驚いた」と話していました。
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インタビューに答える鍛治さん(左)と谷地前さん(右)
ご自宅は全壊し、家族全員が同じ場所に住むことができず一時期は孫一家が金沢に移り住むなど、バラバラになった時期もありました。仮設住宅に当選したことで、再び家族が一緒に住むことができ、旧自宅の道向かいに新たな住居を建設。旧自宅の荷物を新居に運び出したのち、解体工事に入るのだといいます。旧自宅や蔵には黒瓦が使われており、こちらは3社共同プロジェクトに使われることが決まっています。
取り組みについて、「品物を見せてもらった。少しでも利用してもらえるなら、お願いしたほうがいいと思った」と谷地前さん。
「新しく自宅を建てるにあたり、黒瓦を使えないかと聞いたところ、『もう作っていない』と言われました。『ああ、そうなんだ。残念だな』と思いましたね」と振り返り、だからこそ、元の家で使われていた黒瓦を活かしてもらうことにしたそうです。
新たな建材に生まれ変わらせる本取り組みは、珠洲らしさ、日本らしさを感じられる素晴らしい風景が失われる寂しさを少しでも照らす光となるでしょう。実際に建材として使われ始めるのは、これから。どのような広がりを見せていくことができるか、ぜひ見守っていただけるとうれしいです。
【LIXILのイノベーション】
LIXILでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパス(存在意義)の実現に向け、常に新しいことにチャレンジしています。これまでの枠にとらわれない斬新な発想、そしてさまざまなバックグラウンドを持つ従業員の多様な視点や協業者とのコラボレーションから生まれる新たな価値-このようなことを大切にし、イノベーションを創発していくことで暮らしの未来を創造していきます。
LIXILは今後も、私たちの行動指針LIXIL Behaviorsの一つにある「実験し、学ぶ」企業文化を醸成し、“やってみよう”と仲間が背中を押してくれる環境を整えてまいります。
https://www.lixil.co.jp/corporate/innovation/
About LIXIL
LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。ものづくりの伝統を礎に、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを通して、世界をリードする技術やイノベーションで、人びとのより良い暮らしに貢献しています。現在約53,000人の従業員を擁し、世界150カ国以上で事業を展開するLIXILは、生活者の視点に立った製品を提供することで、毎日世界で10億人以上の人びとの暮らしを支えています。
株式会社LIXIL(証券コード: 5938)は、2025年3月期に1兆5,047億円の連結売上高を計上しています。
LIXILグローバルサイト:https://www.lixil.com/jp/
関連リンク
PremiAL(プレミアル)
https://www.lixil.co.jp/lineup/s/premial/
revia(レビア)
https://www.lixil.co.jp/lineup/s/revia/
textone(テクストーン)
https://newsroom.lixil.com/ja/2024040501
LIXILのイノベーション
https://www.lixil.co.jp/corporate/innovation/
LIXILグローバルサイト
https://www.lixil.com/jp/




























