女性が乗用車にはねられた横断歩道。女池インターチェンジ近くで交通量が多い=新潟市中央区
女性が乗用車にはねられた横断歩道。女池インターチェンジ近くで交通量が多い=新潟市中央区

 横断歩道での悲惨な事故が後を絶たない。日本自動車連盟(JAF)の調査で、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている状況での車の一時停止率は、新潟県が23・2%と全国で最も低い。道交法は横断歩道での歩行者優先道交法は、横断歩道を渡っていたり、渡ろうとしていたりする歩行者がいる場合、車両は横断歩道の手前で一時停止し、通行を妨げてはいけないと定めている。悪質な違反の場合、3カ月以下の懲役か5万円以下の罰金の罰則が科せられる。を定めるが、ルール無視が横行する。一時停止をしていれば守られていた命が、暮らしがある。横断歩道事故で家族を失った遺族や被害者の声に耳を傾けた。(2回続きの2)

 事故には人一倍気をつけていた。新潟市中央区の女性(72)は2018年12月26日午後5時半前、買い物帰りに中央区の女池インターチェンジ近くにある信号機のない横断歩道にさしかかった。小雨が降る中、明るい紫色の傘を差し、左右を確認してから3メートルほどの短い歩道に入り、渡り終えるところで、乗用車が突っ込んできた。

 事故のショックなのか、はねられた時の記憶はない。目覚めたのは手術後で病院のベッドだった。骨盤3カ所が曲がり、肋骨(ろっこつ)やすねの骨を折る大けがを負った。麻酔が切れると、激痛に襲われた。約4カ月の入院で「死ぬほどの苦しみを何度も味わった」。

女性が事故に遭った横断歩道=新潟市中央区

 5年がたつ今も左膝が痛み、左足全体にこわばりが残る。後遺症に苦しみ、週に一度はリハビリに通う。日常生活を送るのがやっとだ。好きだった海外旅行はもう諦めた。

 車を運転していたのは当時60代の女。過失運転致傷罪で...

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