災難を払い、開運を願う千蔵院の「星まつり」。護摩の火は仏の知恵の光であり、星の光にも通じるという=長岡市柏町1の千蔵院(長岡支社・新井田悠撮影)

 厳しい冬から初春へ。如月(きさらぎ)の祭りにはそんな雰囲気が漂う。気になっていた新潟県中越地方の祭りを訪ねた。

(長岡支社・井川恭一)

[星まつり]天上の星々を招いて供養…ロマンチック~♪

新潟県長岡市・千蔵院

 「星まつり」というちょっとロマンチックな響きのある行事が、節分の2月3日、新潟県長岡市中心街にある真言宗のお寺「千蔵院(せんぞういん)」で催された。

 薄暗い本堂に僧侶の読経の声が満ち、太鼓も打ち鳴らされ、腹にずんずんと響く。住職の諸橋精光(せいこう)さん(70)が一心不乱に「星供大護摩(ほしくだいごま)」を進める。護摩の火が赤々と上がる中、参拝者が本堂の内陣を巡り、僧侶からけがれや煩悩を払ってもらう。

 「良い星の下に生まれた」というたとえがあるように、星が人の運命や運勢をつかさどるという考えに基づく行事だ。天上の星々を寺の壇上に招いて供養し、開運や除災難を祈る。

 1月23日には、雪がしんしんと降る中、天上の星々を招く護摩を執り行った。節分の時とは異なり、諸橋さんが1人で内陣に座り、供養を進めていく。「わずか数十センチの高さの壇上だけれど、世界の一番高いところから、これをやっているんだと感じ、清らかな気持ちになる」

 翌日からも毎朝、供養を重ね、暦の上で冬と春の分かれ目である節分の星まつりを迎える。「これだけ本式にやるのは本山クラスでもまずない」と自負する。

 長岡藩主牧野家の祈願寺でもあった千蔵院は地元から敬愛されている。星まつりは少なくとも明治以降、続いており、訪れた人たちは「いい年になりそう」「季節を呼ぶにふさわしいお祭り」と幸せな気分を持ち帰った。

 境内には、回すと運気が上がるという石造りの「北斗七星 星車」もある。2024年はどんな1年になるだろうかと思いを巡らせ、輪っかの形をした星車をころころころと3回ほど回した。

 

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新潟県魚沼市・八幡宮

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