住み慣れた地域で暮らし続けるには、医療の拠点が欠かせない。危機感を持って、持続させる方策を探りたい。

 県病院局は2024年度の病院事業会計が過去最大の46億円の赤字になったと発表した。運転資金に当たる内部留保資金は想定より1年早い25年度末にも枯渇する見込みだという。

 給与費が増加し、患者数の伸びが想定通りにならなかったことが主な要因である。県病院局の金井健一局長は「赤字額、内部留保資金のいずれも極めて深刻な状況」と強調した。

 内部留保資金が枯渇した場合、病室のエアコン使用制限や、職員の時間外勤務手当の支払い停止が行われる可能性があるという。

 患者に負担がかかるほか、人材確保でも悪影響が懸念される。早急な改革が求められよう。

 県病院局は、大規模病院については機能を強化し、病床の効率的な稼働や診療報酬の加算を目指す。そのほかの病院では、入院患者数の減少に合わせて病棟廃止も含めた病床規模の適正化に取り組むとしている。

 経営改革の一環として、十日町市の松代病院は26年4月、39床の入院ベッドをなくし、無床診療所に転換する。

 花角英世知事は記者会見で「医療を取り巻く環境が変化していることや病院の状況を説明し、住民に理解していただけるよう努める」と述べた。

 松代病院は中山間地の豪雪地帯にある。看病する家族は、より遠くの病院へ通わなければならない。冬場の交通手段などについて、住民から不安の声が上がっていることは見過ごせない。

 病院の経営改善と、住民が安心して生活できる環境を両立させるために知恵を絞ってもらいたい。

 今後は松代病院と同じく小規模の柿崎病院(上越市)、妙高病院(妙高市)、津川病院(阿賀町)が改革の焦点となる。

 県は25年度中にも縮小も含めて機能や規模を見直す方針だ。住民に丁寧に説明し、理解を得るよう求めたい。

 県内各地で病院を運営するJA県厚生連は、県や病院が立地する市から財政支援を受け、経営再建に取り組んでいる。

 県立病院は県厚生連とともに、七つの医療圏ごとに、病院の役割と機能を分担し、効率的な運営に努めなければならない。

 本県はそもそも県土が広い上に、人口減少に伴って患者が減っている。県立病院の採算性が低い背景には構造的な問題がある。

 石破茂首相の掲げる地方創生を進めるには、地域に必要なサービスを、持続可能な形で提供し続けられる体制が欠かせない。

 政府には地方の直面する医療問題について、支援策を打ち出してもらいたい。