高齢者と家族の命綱といえる制度だ。サービスを受けられない「介護難民」が続出する事態を招いてはならない。制度の維持へ、立て直しが急がれる。

 介護保険サービスの提供体制の持続について、全国の都道府県知事と市区町村長の97%が危機感を抱いていると共同通信社のアンケートに答えた。全知事と、市区町村長の96%に当たる1676の首長が回答した。

 本県は県と全ての市町村長が危機感を示した。

 危機感の理由は「介護現場で働く人が減り、制度の支え手不足」が最も多かった。サービスを根幹から揺るがす課題である。

 介護分野は、負担が重い割に他産業に比べて賃金が低く、慢性的な人手不足となっている。

 しかも、人手不足は介護需要の増加に伴って加速する見通しだ。国の推計では、高齢者の数がほぼピークとなる2040年度には介護職員は約272万人必要だが、約57万人不足すると見込まれる。

 担い手の確保は待ったなしで、そのためには介護職員の処遇改善が欠かせない。

 ただ、介護事業者単独での改善は難しい。収入の柱である介護報酬は国が定めており、賃上げの原資を増やす手だては限られる。増収がないまま賃上げに踏み切れば不採算となり、事業者が撤退に至ることも懸念される。

 影響を受けるのは利用者だ。実態に合わせた介護報酬の引き上げが必要だろう。

 負担の議論も急がれる。介護サービスの費用は、原則1割の利用者負担、40歳以上が支払う保険料、税で賄う国と地方の公費が財源となっている。

 利用者負担を除いた介護給付は、23年度は約10兆8千億円で、介護保険制度が始まった00年度の3倍以上に膨らんだ。

 アンケートでは、85%の首長がいずれかの財源の引き上げを検討すべきだとし、このうち84%が「国の負担割合の引き上げ」を優先すべき施策に挙げた。

 厳しい地方財政と、介護サービス維持への切迫感が反映された結果といえる。

 介護の受け皿不足は以前から指摘されており、環境整備の遅れは否めない。国は地方の声を重く受け止めてもらいたい。

 制度の開始以降、国はサービスの縮小と負担増を繰り返してきた。昨年度の介護報酬改定では訪問介護の基本報酬を引き下げた。

 民間の調査では、訪問介護事業者の1~6月の倒産件数は今年が過去最多となり、県内でも市が事業者を支援するなど影響が出ている。介護現場の実態と国の方針にずれはないか。

 誰もが迎える老いは、十分なサービスがあってこそ支えられる。国は現場の状況もくみつつ、制度を盤石なものとしてほしい。