総裁選の日程が決まり、政治空白がさらに長期化する懸念が高まった。石破茂首相と自民党は責任政党として、政治の遅滞を避ける努力をしてもらいたい。

 自民党総務会は10日、退陣表明した石破首相の後任を決める総裁選を、22日告示、10月4日投開票とすることを正式決定した。

 投票は、国会議員に加え、全国の党員・党友が参加する「フルスペック型」で実施する。

 総裁任期途中での辞任は緊急時に当たり、党員投票を行わない「簡略型」も可能だったが、幅広い声を反映させる形式にした。

 参院選大敗からの「解党的出直し」を掲げる党内で、党員の考えをくみ取るべきだとする意見が根強かったことが背景にある。

 自民は11月に結党70年を迎えるが、現状は衆参両院で議席が過半数に届かず、結党以来の危機にあるといえる。

 挙党態勢を築く上でも、総裁選びで党員・党友の意見を聞くことには意義があるだろう。

 ただ、これによって秋の臨時国会召集が遅れるのは確実になった。早くても10月中旬から20日ごろになるとの見方がある。

 既に7月の参院選から50日以上がたっている。臨時国会の召集が10月中旬となれば、参院選からは3カ月近くが過ぎる。

 参院選の公約で自民は、一律2万円の現金給付を物価高対策に掲げたものの、選挙後は「石破降ろし」を巡る党内の政争が優先し、議論が棚上げされた。

 物価高など待ったなしの課題があることを認識しながら、何ら対策が示されぬまま、時間が過ぎてきたのは由々しきことだ。

 石破首相は退陣表明直前の5日になって、現金給付や米関税措置への対応で「秋に経済対策を策定する」と表明し、与党に検討と野党との協議推進を求めた。

 しかし、森山裕幹事長をはじめ党四役は既に退任の意向を示しており、調整が進む保証はない。

 立憲民主党など野党各党は10日、首相の退陣表明に伴う政治空白の長期化は許されないとして、憲法53条に基づく臨時国会の召集を要求した。衆院総議員の半数を超える239人の連名で、9月中の召集を求める。

 野党は11月1日の法施行を目指すガソリン税の暫定税率廃止や、物価高対応を国会で審議する必要があると主張している。

 憲法53条は衆参両院のいずれかで総議員の4分の1以上の要求があった場合、内閣は召集を決定しなければならないとするが、召集するかどうかは、首相や与党の判断に委ねられるのが実態だ。

 退陣が決まっているとはいえ、政治が前進するように、石破首相は任期の限り力を尽くすべきだ。

 同時に自民は、山積する課題にどう対処するか、総裁選で議論を活発化させなくてはならない。