身近なインフラにリスクが潜むことが明らかになった。補修を急ぐためには、対応する自治体への十分な支援が欠かせない。
埼玉県八潮市で1月に起きた下水管の腐食が原因とみられる道路陥没を受け、古くて大きな下水道管を自治体が調べた結果、41都道府県の計297キロで道路陥没につながる恐れがある腐食や損傷が見つかった。
調査を終えた621キロのうち半数に迫る。
中でも本県を含む35都道府県の計72キロは、特に深刻な劣化が確認された。下水道管周辺で6カ所の空洞も見つかり、そのうち2カ所が新潟市内だった。危険性を重く受け止めなければならない。
陥没を引き起こす老朽化への対処が急務だが、手間取っているのが実情だ。しかも上水道も老朽化リスクに直面している。水道管劣化は断水を招きかねない。
高度経済成長期に整備が進んだ上下水管の管路網は計120万キロ余りに及ぶ。
耐用年数は下水道管50年、水道管40年とされるが、国土交通省のまとめでは2040年時点で建設後50年以上となる割合は下水道管34%、水道管41%に上る。
対応遅れの一因は人手不足だ。水道関連業務の自治体職員数は1980年頃より4割も減った。
維持や改修の費用は原則として自治体が住民から受け取る料金で賄うが、人口減少に伴い、料金収入は減っている。不足を補うために、値上げが避けられないケースが出ている。
全国の道府県庁所在地と東京都区部の計47都市で1世帯が支払った上下水道代を過去40年間で比較すると、半数近くの21都市で2倍以上になっていたことが共同通信の分析で分かった。
消費支出全体は1・01倍で伸びておらず水道代の上昇が際立つ。
気になるのは、都市間格差があることだ。上昇率では3・16倍の富山市が最も高く、盛岡市、津市、さらに2・66倍の新潟市と、地方都市が続いた。
これに対して神戸市や東京都区部は、ほぼ横ばいだった。
水道事業は、人口密度が低いと管路が長くなりがちで維持費はかさむ。反対に人口密度が高ければ効率的に運営できる。
東京都や大阪市が物価高対策の一環として基本料金の無償化に取り組む一方、地方都市は値上げを余儀なくされている。
人口減少の傾向を見れば、この先、地方ほど一層の苦境に追い込まれかねない。
上下水道は最も重要な生活基盤である。特に水道は命に関わる。地域によって負担に大きな差が生じることは望ましくない。
自治体任せの対応では限界がある。補修の優先順位を付け、国全体で計画的に進めるべきである。耐震化も見据えた整備が必要だ。