あってはならない主権侵害である。傍若無人な振る舞いは到底容認できない。これ以上、蛮行を繰り返させてはならない。

 イスラエルがイスラム組織ハマス幹部の拠点を標的として、カタールの首都ドーハを空爆した。

 ハマスはパレスチナ自治区ガザの停戦交渉で交渉団トップを務めるハイヤ氏の息子らメンバー5人が死亡したと表明した。ハイヤ氏本人の生存も主張している。

 カタールの治安部隊要員1人も犠牲になったという。

 米国の報道によると、空爆には戦闘機10機以上が加わり、10発以上の爆弾で1カ所を狙った。住宅や各国大使館もある一角だ。

 ガザの停戦交渉の仲介役を担っているカタールの首都を白昼堂々と攻撃した。

 イスラエルのネタニヤフ首相はカタール政府などにハマス幹部の追放や処罰を求め、なされなければ「われわれがやる」と述べた。空爆を正当化するものであり、看過できない。

 停戦交渉中の攻撃は、ネタニヤフ氏に停戦の意思がないことを示したも同然だ。

 ガザ侵攻を巡っては、ハマスが人質全員を解放し、イスラエル軍は北部ガザ市制圧作戦を進めず市外にとどまるという新たな停戦案を米国が示したばかりだった。

 トランプ米大統領はイスラエルは停戦案の条件を受け入れたと主張しており、ハマスの回答を待っている状態だった。

 空爆で、停戦交渉の先行きはこれまで以上に見通せなくなった。イスラエルが求める人質解放の実現も厳しくなったと言える。

 イスラエルは、自らの行為が和平の道を遠ざけた責任を自覚しなければならない。

 最大の支援国である米国がイスラエルに歯止めをかけられていないことは大きな懸念材料だ。

 米国は事前に把握していたというが、トランプ氏は攻撃を止めるには「遅すぎた」と認めた。

 強硬姿勢で突き進むイスラエルに、これ以上暴挙を重ねさせないよう、米国は行動すべきだ。

 ガザの状況も悪化している。イスラエル軍は北部ガザ市の制圧を目指し攻勢を強める。

 戦闘前のガザの人口は222万人だったが、現地保健当局によると、戦闘開始後のガザ側死者は6万4千人以上、栄養失調による死者は400人を超える。

 イスラエルに対する国際的な批判は高まっている。国際社会で孤立を深め、イスラエルの強硬姿勢がさらにエスカレートしないか、深く憂慮する。

 急がなければならないのは、蛮行を止めることだ。国連安全保障理事会は緊急会合を開催する。英仏豪やカナダは国連総会でパレスチナを国家承認する方針だ。国際社会はあらゆる手段を用いてイスラエルに働きかける必要がある。