マレーシア・サバ州の保護施設では行き場がなくなったゾウたちが暮らす。「ここに連れてこられる頭数を減らしたい」とアレックスは語る=2025年6月(撮影・武隈周防、共同)
 マレーシア・サバ州の保護施設では行き場がなくなったゾウたちが暮らす。「ここに連れてこられる頭数を減らしたい」とアレックスは語る=2025年6月(撮影・武隈周防、共同)
 アブラヤシの農園に現れたボルネオゾウの群れ。自然の森が消えてすみかを失いつつある=2025年6月、マレーシア・サバ州(撮影・武隈周防、共同)
マレーシア・ボルネオ島サバ州

 農園に茂るアブラヤシのトンネルを抜けた先にまばゆい光が注ぐ。20頭ほどのゾウの群れが現れた。親子が鼻でじゃれ合っている。植え替えのため重機が木を砕く音を聞いてジャングルからやって来たようだ。ゾウたちはヤシの甘い新芽が大好物。人の気配を感じて1頭の雄が低い鳴き声を放つ。群れが一斉にこちらをうかがう。

 マレーシアのボルネオ島北東部にはアジアゾウの亜種とされるボルネオゾウが暮らす。やや小柄で大きな耳と長い尾が特徴。長く熱帯雨林で暮らしていたがプランテーション開発ですみかを失い、農園に入り込んで作物を荒らす厄介者となった。時には農家に銃で命を狙われることもある。

 地元で保護活動に関わるアレックス・イ...

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