
2022年、アルビレックス新潟はJ2リーグの頂点に立った。選手間投票などで決まるベストイレブンにリーグ最多の6人が選出され、その強さは他チームからも認められた。試合データからチームはどう分析できるだろうか。シュート数や被シュート数、ボール保持率などのデータを他チームや昨季の新潟と比べた。すると、強さの背景や進化の一端が浮かび上がった。松橋力蔵監督がシーズン中に語った言葉と、データ分析を合わせてみた時、そのコトバはどう響くか-。来季戦うJ1へ思いをはせる前に、いま一度今季を振り返る。(5回続きの1回目)
※データは公式記録、アルビレックス新潟、Jリーグ公認の競技データ「J STATS」による
アルビレックス新潟は今季、J2リーグ最多の73ゴールを奪った。いわばリーグ最強の「矛」を持ったチームだった。
今季の総シュート数は477本。昨季の399本から約1・2倍に増えている。1試合平均では11・35本で、昨季の9・50本から2本近く増えた。興味深いデータがある。シュートの決定率だ。今季は15・30%だったが、昨季は15・28%で、ほとんど変わりがない。

つまり、シュート機会を増やしたにもかかわらず、決定率は落とさなかった。61点だった昨季より12点上乗せし、最多得点につながった要素の一つとなった。
1試合平均のボール保持率を考慮すると面白い。今季は61・6%で、昨季の61・3%とほぼ同じ。ボールを支配して攻撃するスタイルは変わっていない。昨季と同じような比率でボールを保持しながら、シュート回数は増えているのだ。
昨季はボールを取られないように慎重に攻めていたが、今季はよりゴールを狙う姿勢を強めていたことがデータからも分かる。

他チームとの比較はどうか。今季総得点が2位(67点)だった仙台は、シュート決定率が14・59%で新潟を下回る。3位(66点)の横浜FCは15・34%とわずかに新潟を上回っている。ただ、この数値は突出した「個」の力との関わりが大きい。横浜FCは得点王に輝いたFW小川航基が、総得点の4割を占める26ゴールを挙げているためだ。
新潟は9ゴールのFW谷口海斗、MF高木善朗、MF伊藤涼太郎の3人が最多得点者。2桁の得点者はいないが、実に20選手がゴールを奪った。
「入らなければ“ナイスシュート!”ではない」
練習から質にこだわった松橋力蔵監督のコトバだ。日頃の練習で、質と「イズム」をチームに落とし込んだ成果として、チーム力は着実に底上げされた。
誰かに頼ることなく、チーム全体で高いシュート決定率をたたき出したことは、今季のレベルの高さを一層引き立たせる。
※第2回は「矛と盾―最強の盾」です。